SANNO SPORTS MANAGEMENT 2011年 Vol.4

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2011年 Vol.4 FEATURE「スポーツは人を育てる」


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04SANNOオープンで芽生えた新しい夢産業能率大学女子ビーチバレー部4年中村彩羅文:小野田哲弥2011年12月18日(日)、産業能率大学湘南キャンパスのビーチバレーコートにおいて、日本ビーチバレー連盟(JVB)の公認大会『SANNOオープン』が開催された。国内女子最強の田中姿子(エコ計画)&溝江明香(産業能率大学)ペアをはじめ、プロ選手も数多く出場した大会であったが、実はこの大会の運営責任者は、まだ大学3年生の一人の女子選手であった。それが、中村彩羅である。SANNOの空気が後押し選手として何度か公認大会に出場した経験のある中村は、これまでの大会で、プレイヤーとして出場しながら運営サイドも担う、“二足のわらじ”を履いた選手を何人も目にしてきた。そして次第に、自分もその立場に立ちたい」との思いが強まっていったという。しかしこれまで、学生が公認大会を取り仕切った前例はない。なぜ失敗を恐れずにチャレンジできたのか。そのきっかけを尋ねると、2つの答えが返ってきた。一つは「大学の施設の良さ」、そしてもう一つは「大学のサポート体制」だという。第一の理由は、大学に国際基準をクリアしたビーチバレーコートと観客席が常設されていることにあった。コートの設営から始めなければならないこれまでの大会に比べ「学内開催なら企画と運営に集中できる」との思いが、心理的なハードルを下げたに違いない。第二の理由として中村は「SANNOには、学生が何かを発信すれば、必ず応援してくれる空気がある」ことを挙げた。実際にこの大会は、「キャンパス魅力向上運動※1」の一環として教職員や学生たちの全面的なサポートを得た結果、無事に成功を修めることができたといえる。「資金集め」の壁しかし、すべてが順調に進んだわけではなかった。大会開催に漕ぎつけるまで、彼女は多くの苦難も経験した。中でも最大の壁として立ちはだかったのは「資金集め」であった。大学の同じコートでは、これまでも「ビーチバレーフェスタ」や「スポーツ教室」などが開催されてきた。しかし今回の『SANNOオープン』は、それらとは決定的に違うものがあったという。「ちびっこ対象のスポーツ教室では、地域のお父さんお母さんがボランティアで協力してくださるので、お金の問題を意識することは全くありませんでした」と、彼女は素直に語ってくれた。つまり、“レクリエーション”としてのビーチバレーではなく、“ビジネス”としてのビーチバレーを初めて目の当たりにした瞬間であった。現実問題として、賞金に魅力がなければ良い選手が集まらないのがプロの大会である。その賞金を用意するためには、スポンサーを引き受けてくれるよう、たくさんの企業を説得して回らなければならない。『SANNOオープン』の大会責任者として、中村は身をもってその苦労を実感したのであった。普及活動の先頭に立ちたい今回の経験を機に、中村の中に新たな夢が芽生えている。それは「ビーチバレーを普及させていく仕事に就きたい」というものである。「ビーチバレーにあまり関心のなかった企業さんに、ビーチバレーの魅力を伝えてスポンサーさんになってもらえたら、賞金や運営体制がもっとしっかりします。そうしたら、プロになりたい選手も増えて競技のレベルも上がるし、その大会を子供たちが観に来れば、自分もやりたいということになって、どんどん好循環が生まれていくと思うんです」彼女はそう熱っぽく語ってくれた。ただしその実現に向けたプロセスは、イバラの道となることだろう。しかし彼女はこう続けた。「ビーチバレーは新しいスポーツなので、誰かがやるのを待っているんじゃなくて、自分から積極的にトライしてみたい。アクションを起こせば必ず誰かが支えてくれることをSANNOで学んだので、最初から無理だと諦めることなく、全力でチャレンジしたい」。そんなまっすぐな思いが多くの共感を生み、ビーチバレー環境にさらに明るい光が差し込む日も近いかもしれない。それを確信させるほどに、中村彩羅の瞳は輝いていた。中村彩羅選手なかむら・さいら1990年9月5日、茨城県生まれ。小学3年時に全国大会出場、中学では県選抜にも選出。私立大成女子高校時代にはセッターとして春高バレーとインターハイに出場。2009年、産業能率大学に入学し、女子ビーチバレー部に入部。同年、新潟国体ビーチバレーで5位に入賞するなど、選手としても活躍中。※1魅力あるキャンパスづくりを目的に、産業能率大学後援会の支援により1996年度よりスタートした運動。“どうしたら”大学生活がおもしろくなり、“どんな”大学なら誇りがもてるのか。そのための企画を学生自身が考えて実施している。なお優れた運動は年度末に表彰され、賞状および副賞が授与される。10


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