SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3 FEATURE「湘南から世界へ」


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主要参考文献●Agrawal,R.,T.Imielinski,andA.N.Swami(1993);MiningAssociationRulesbetweenSetsofItemsinLargeDatabases”,Proc.oftheACMSIGMODConferenceonManagementofData,pp.207-216.●Berry,MichaelJ.A.andGordonS.Linoff(1997);DataMiningTechniques:ForMarketing,Sales,andCustomerSupport,JohnWiley&Sons.Cooper,Alan(1999);TheInmatesAreRunningtheAsylum,SAMS.●原田和弘・中村好男(2009);「身体活動・運動への興味を高める方略としての趣味・余暇活動ゲートウェイの可能性」,『スポーツ産業学研究』,Vol.19,No.2,pp.129-143.●大澤幸生(2002);チャンス発見におけるデータマイニング」,計測と制御』,Vol.41,No.5,pp.325-330.表3.自分の子供(女の子)にビーチバレーをさせたい女性のライフスタイル変数INPUT変数統計量質問ID質問内容カテゴリ項目名Support(%)Confidenc(%)LiftQ1習い事経験幼児期音遊び/リズム遊び(幼児音楽教室)2.83.74.348小学校低学年バレエ3.33.23.715Q2運動部経験幼児期水泳5.82.52.956小学校高学年バレーボール6.03.84.437中学校バレーボール7.53.64.216水泳3.53.03.473高校バレーボール3.06.98.096バスケットボール2.63.23.727Q3文化部経験高校合唱2.73.13.668演劇2.93.64.193Q4スポーツ活動現在ジョギング・ランニング6.03.84.468スノーボード2.84.45.141ヨガ3.93.23.727DVDを利用したエクササイズ3.14.14.759テレビゲームによるエクササイズ2.64.75.546将来ダイビング2.76.17.169ゴルフ3.64.04.750ジョギング・ランニング14.32.63.080スキューバダイビング3.13.43.939登山3.35.66.603ハイキング2.96.57.656スキー3.94.85.590スノーボード4.64.55.336自転車(屋外)7.04.75.573ピラティス6.33.74.290ベリーダンス3.34.55.234乗馬3.84.35.104DVDを利用したエクササイズ5.82.93.366テレビゲームによるエクササイズ5.83.23.787エアロビクス3.65.26.143Q5余暇活動現在スポーツ観戦(競技場などで)9.93.13.692ドライブ・ツーリング8.32.52.942キャンプ・釣り4.15.05.899スポーツ中継視聴17.23.03.553将来スポーツ観戦(競技場などで)14.33.03.573ドライブ・ツーリング10.82.52.935キャンプ・釣り7.53.94.540スポーツ中継視聴15.52.83.305Q6させたい習い事女の子合唱/コーラス2.73.13.668演劇/ミュージカル3.02.83.261Q7させたいスポーツ女の子馬術3.02.83.261ラクロス2.73.13.640Q8子育て観因子夢見因子5.32.83.235Q9スポーツ関心競技名海外サッカー7.54.14.851ゴルフ6.06.27.312MLB4.56.98.077バレーボール13.64.95.726高校バレー2.619.422.721Q10ブランド嗜好ブランド名ミズノ(MIZUNO)5.35.15.961ユニクロ(UNIQLO)6.84.04.681ヨネックス(YONEX)2.94.35.031リーボック(Reebok)2.84.45.217ロキシー(ROXY)3.44.35.011アシックス(ASICS)7.54.75.559エレッセ(ellesse)2.54.14.811ザ・ノース・フェイス(THENORTHFACE)2.85.15.998デサント(DESCENTE)3.07.08.267ニューバランス(NewBalance)6.13.84.407パタゴニア(Patagonia)2.53.43.979フィラ(FILA)4.66.87.932プーマ(PUMA)12.43.43.939表2.2010年度のインターネット調査概要新設質問ID質問内容項目数★Q1子供の頃の習い事経験280Q2学生時代のスポーツ経験300★Q3学生時代の所属文化部75Q4現在行っているスポーツ/将来行いたいスポーツ140★Q5現在行っている余暇活動/将来行いたい余暇活動112★Q6子供に行ってほしい習い事64Q7子供にやってほしいスポーツ154★Q8子育てに関する価値観36★Q9スポーツニュースへの関心67★Q10スポーツブランドの嗜好133合計1,361調査期間2011/2/23~3/10調査委託株式会社ネットマイルサンプル数9,477名世代別サンプル数16-20歳:男性664名/女性813名21-25歳:男性1,000名/女性1,00名26-30歳:男性1,000名/女性1,00名31-35歳:男性1,000名/女性1,00名36-40歳:男性1,000名/女性1,00名ゲートウェイ・マイニングの始動2010年度に新たに着手した研究として「ゲートウェイ・マイニング」が挙げられる。ゲートウェイ(gateway)とは“入口”を意味し、前号で報告した親子間のスポーツキャリアパスも、子供がビーチバレーを行うそのきっかけ(入口)となる親のスポーツキャリアを調べた点でゲートウェイ研究に通じる。他方、マイニング(mining)とは“発掘”、とりわけデータ分析の世界では“塵の山から宝を発掘する”意として捉えられる。すなわち、より膨大な数の入口候補を用意して調査と解析を行った点が、昨年度との決定的な違いである。意外な発見を意図した調査設計2009年度は「わが子にビーチバレーをさせたい親のスポーツキャリア」について調査した。しかし、親のスポーツ経験が子供のスポーツ経験に影響を及ぼすことは自明であるため、定量的な把握に一定の意義はあるとしても、その結果が実務的に大きな示唆をもたらすことは期待できなかった。そこで2010年度は、直接的な因果関係を事前に想定できないような、意外性のある項目群を多数用意し、表2の概要で調査を実施した。★の付いている項目が新設項目である。高い具象性がもたらすペルソナ想起データ解析手法は、前回同様の相関ルール(Association-Rules)を用いた。紙幅が限られるため、女性サンプル(母親想定層)において「ビーチバレーニュースに関心がある」(Support=0.9%)をOUTPUT変数とした場合に、関連の高いINPUT変数群の抜粋のみを表3に示す。この結果は具象性が高すぎ、一般的には理解不能である。しかし長年ビーチバレーに携わってきた専門家が眺めれば次のように解釈できる。自身がバレーボール経験者であり、アウトドアやマリンスポーツに関心が高い(したがって好きなブランドにもサーフブランドが含まれる)点は既出の知見だが、興味深い発見が2点指摘できる。一つは“流行りものに敏感”な点であり、その傾向を説明するのが、現在行っている「DVD/テレビゲーム利用のエクササイズ」や、関心のあるスポーツとしての「海外サッカー」MLB」である。すなわち、ビーチバレーもこれらの“流行りのスポーツ”の一つとして、彼女たちの関心事になっている可能性がある。そしてもう一つは、“娘を有名にしたい”という価値観ではなかろうか。子育て観の「夢見因子」とは具体的には「将来子供には有名人になってほしい」という質問にYesと回答した場合が該当する。自身が「バレエ」「合唱」「演劇」の経験者であり、女の子にさせたい習い事に「合唱/コーラス」「演劇/ミュージカル」などが挙がっている点もその証左といえよう。現在ビーチバレー界にはアイドルが存在する。その選手をモデルケースに、いわゆる“ステージママ”たちの関心もビーチバレーは集めていると解釈できる。このようにゲートウェイ・マイニングは、その出力結果が詳細すぎるために結果それ自体に学術的価値を主張することは難しい。だが実務家が普及活動を行う際に必要とされる新規顧客の鮮明なプロフィール描写(ペルソナ想起)を助けるならば、そこには方法論としての価値が認められるに違いない。本研究はまだ始動したばかりである。「調査」と「現場」との連携をより緊密にしながら、当該研究を発展させていきたい。18


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