SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3 FEATURE「湘南から世界へ」


>> P.20

トライアスロンは世界選手権が毎年行われ、エリート部門だけでなく、同じ日程の中にジュニア(16~19歳)、23歳以下(18~23歳)のカテゴリーも開催され、若手選手が、早い段階から、世界各地の強豪選手の強さを肌で感じることができます。トライアスロンのエリート部門で活躍する選手たちの年齢は25歳以上が多数を占め、マラソンなど他の持久系種目とパフォーマンスのピーク年齢は同様です。これは、質の高いトレーニングを強い意志、課題解決方法を考えながら、積み重ねてゆくことで、身体が高いパフォーマンスを発揮するための準備ができてゆくということです。ジュニアカテゴリー、23歳以下カテゴリーの世界選手権に出場し、高い競技力を早い段階から発揮させることも必要ですが、競技成績ばかりが先に立ち、身体的、精神的な負荷が高すぎて、競技を続けられなくなってしまうことは避けなければなりません。他の競技同様、競技は年々スピード化され、若い年代から質の高いトレーニングが必要になり、高い目標を持たせてトレーニングをしてゆかなければなりませんが、前述のように25歳以上というピーク年齢も意識した指導をしてゆかなければなりません。その選手のピークである時期に、より高いパフォーマンスを発揮させるために、スポーツをやりたいと思う子供たちの才能を見出し、発育、発達の状況に合わせて適切な体力的、技術的なトレーニングを行い、競技に関する精神力、知識を習得させてゆく必要があります。どんなに才能がある選手でもピークパフォーマンスを発揮する年齢までスポーツを続けることができなければ、そのパフォーマンスは発揮できません。最初に考えるべき事は、長く続けられるようにスポーツと付き合わせること。スポーツそのものを楽しいと感じ、より高いステージでライバルと競い合う事を楽しいと感じさせることがポイントになると思います。とくに小学生、中学生の段階では、勝負に拘らず、どんなスポーツにも役に立つ身のこなし、技術を習得し、ひとつずつ「できなかったことができるようになった!」というステップアップしてゆく喜びを感じさせることが大切です。ここ数年日本オリンピック委員会や、各中央競技団体は、オリンピックや世界選手権などで高いパフォーマンスを発揮するために、語学のトレーニングやメディアトレーニングなども積極的に取り入れています。海外にでて、日本と違う文化、環境の中で、様々なプレッシャーの中でも平然と自分の持っている力を発揮するためのトレーニングです。これは中央競技団体だけでなく、地域のスポーツクラブでも将来を考え、トレーニングや戦術、身体のことだけでなく、競技に関係するすべての事に準備をしてゆくことが必要です。これらの事は、競技をやめてからも役に立つことです。また、25歳という年齢は、大学を卒業し、一般的には就職をして自分自身で生活をしてゆかなければならない年齢です。この年齢まで競技中心の生活をするための経済的基盤も作らなければなりません。現在、日本国内で、トライアスロンだけで生活ができている選手は20名程度。ほかの選手は、親からの支援や、午前中から昼すぎにかけてトレーニングをし、夕方からアルバイトなどで生活費、遠征費を稼いでいます。トライアスロンは、競技特性上、トレーニング時間が長く、疲労回復の時間も質の高いトレーニングを行い続けるために重要なポイントとなります。育成の段階でも経済的支援ができる環境を作り上げてゆく必要もあります。質の良いトレーニングを提供するだけでなく、その選手が高いレベルの大会にでるタイミングを考え、その時の環境も考えて育成する事を心がけ、その基盤を作ってゆきたいと考えております。将来を考えた指導と環境づくり中島靖弘NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブトライアスロンチームヘッドコーチ0919


<< | < | > | >>