SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3 FEATURE「湘南から世界へ」


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本研究所では、現場」においてビーチバレーの普及活動を先導してきた川合庶と、インターネットを利用した「調査」を専門にする小野田とが異色のコラボレーションを行っている。前号では一般男女1万人に対してインターネット調査を実施し、バレーボールとビーチバレーとのイメージ比較や、親子間のスポーツキャリアパス解析などを行った。本号では、前回調査の1年後に実施した同様の調査結果を前回調査と比較するとともに、2010年度より新たにスタートさせた研究についても報告する。本文の執筆は、データ周りを小野田が、結果の解釈を川合が主に担当した。表1.バレーボールとビーチバレーのイメージ比較(年度別平均値の差の検定)ID対立概念バレーボールビーチバレー+2←プラス側マイナス側→-220092010有意水準(両側)有意性20092010有意水準(両側)有意性1華やかな地味な0.2380.5800.6%**0.5920.8801.3%*2メジャーなマイナーな0.6200.8407.3%-0.2700.0800.5%**3かたいやわらかい0.2060.4109.4%-0.456-0.38053.6%4男性的な女性的な-0.168-0.16094.7%-0.468-0.2407.7%5開放的な閉鎖的な0.1740.35016.4%1.1201.3204.6%*6陽にあたる陽にあたらない-0.390-0.37089.2%1.2861.4904.8%*7さらさらしたしっとりした-0.0440.2401.8%*0.1840.35018.3%8大胆な慎重な0.2560.38030.9%0.8181.1000.8%**9流行の昔からある-0.518-0.35020.2%0.6040.60097.1%10痛い痛くない0.5260.63039.0%0.1560.28035.6%11汚れる汚れない-0.656-0.61070.8%1.0021.18011.8%12暑い寒い0.5960.63076.2%1.3621.45035.0%13易しい難しい-0.488-0.2708.9%-0.566-0.47044.8%14なじみのあるなじみのない0.8461.1002.1%*-0.342-0.0200.9%**15健全な不健全な1.1141.2607.2%0.8140.98010.8%16美しい美しくない0.4800.7601.1%*0.5400.7803.8%*17スピード感のあるゆったりした1.1741.21069.0%0.5160.68019.4%18楽しい苦しい0.7621.0002.8%*0.6860.9601.1%*19集団的な個人的な1.1821.4002.6%*-0.556-0.39018.5%20興奮する落ち着く0.8381.0702.7%*0.5980.9300.2%**21緊張したリラックスした0.6980.80033.3%-0.0080.3300.6%**22理性的な感情的な0.2880.47012.7%-0.1440.1302.7%*23まじめなふまじめな0.8661.0604.2%*0.3340.52011.1%24自由な束縛的な0.1220.18063.8%0.8761.0508.6%25マッチョなスリムな-0.288-0.27088.2%-0.0120.19012.3%前回調査との比較表1は、前号と同様の25対の対立概念を提示し、バレーボールとビーチバレーそれぞれについてイメージを尋ねた調査結果の比較である。それぞれの年度において「+2:かなりプラス側」「+1:ややプラス側」「-1:ややマイナス側」「-2:かなりマイナス側」として平均を算出し、その値を年度間で比較するt検定を行った。平均値は絶対値0.250ごとに階層区分を行い、プラス側ほど暖色系、マイナス側ほど寒色系で網掛けをしている。なお有意性の列は、両側確率で「1%有意」の場合に「**」、「5%有意」の場合に「*」と記した。世界バレーの影響が大きかったバレーボール2010年度のバレーボールを語る上で欠くことができないのは、世界バレー(バレーボール世界選手権:FIVBVolleyballWorldChampionship)における、全日本女子(女子日本代表)の32年ぶりとなる銅メダル獲得(2010年11月14日)である。2010年度の調査は2011年に入ってから実施したため、この快挙の影響が如実に現れる結果となった。各種目に対するイメージは、男子種目・女子種目に分けて尋ねたものではないが、1%有意で最も大きな変化が見られたイメージが「華やかな」であり、「なじみのある」「美しい」「楽しい」「集団的な」「興奮する」などの各イメージも5%有意で強化された点を踏まえれば、その変化は、世界バレーにおいて全日本女子が一致団結して強豪国を打ち破り、試合のテレビ中継も連日高視聴率を記録したことに基づくと説明してよいであろう。歴史が長いためイメージが安定している感のあるバレーボールであっても、このような大きな変化が起こりうる。この事実は、活躍し結果を残すことがスポーツにとっていかに重要であるかを改めて教えてくれる。競技認知がより浸透したビーチバレーインドアのバレーボールは世界的に華々しい成績を残したが、国内において競技としてのイメージ変化がより大きかったのはビーチバレーの方かもしれない。表1の25対の対立概念のうち、有意性に印のある概念がバレーボールでは8件であるのに対し、ビーチバレーでは11件にも及び、1%有意で大きくイメージ変容が起こった概念に関しては、前者1件に対して後者は5件にも上るからである。確かに、歴史の浅いビーチバレーのイメージは定着しておらず、未だ不安定だともいえよう。だが表1からは、一貫した変化の傾向を読み取ることができる。それは、メジャーな」「なじみのある」「理性的な」の強化である。年々ビーチバレーがメディアに取り上げられる回数が増え、マイナー競技という印象はもはや払拭しつつある。その結果、ルールや競技特性も以前より理解が進み、頭脳的なテクニックが重要な競技であるとの認識が徐々に浸透してきていると解釈できるからである。この変化については筆者も肌で感じている。以前であればスター選手目当てで来場し、競技に関してはまったく無知な観客も珍しくなかった。しかし最近ではスタンドに耳を傾けると、ランキングやプレー内容について熱く語り合うファンの会話が聞こえてくるようになったからである。ビーチバレーは目新しい段階を越え、スポーツ文化の一つとしてまさに根づきつつあるのだろう。その流れが一過性で終わらないためにも、バレーボールの活躍に負けないほどに、ビーチバレーも世界で結果を残すことが、いま強く求められている。ビーチバレーの普及に向けた「調査」と「現場」との連携2小野田哲弥情報マネジメント学部准教授川合庶日本バレーボール協会ビーチバレー強化委員会副委員長湘南ベルマーレビーチバレーチームゼネラルマネージャー/産業能率大学女子ビーチバレー部ヘッドコーチ0817


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