SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3 FEATURE「湘南から世界へ」


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1.経済産業省「社会人基礎力」育成のススメ~社会人基礎力育成プログラムの普及を目指して~2007年5月2.経済産業省今日から始める社会人基礎力の育成と評価2009年6月3.松岡宏高(2010)スポーツマネジメントの概念の再検討スポーツマネジメント研究2(1):33-454.松岡宏高日本の大学におけるスポーツマネジメント教育の現状と課題びわこ成蹊スポーツ大学紀要5:71-76(2008)そこで本研究では、本学が育成する人材像に掲げている、マネジメント実践力を兼ね備えた人材といった観点を鑑み、さらには経済産業省のまとめた「今日から始める社会人基礎力の育成と評価」において、PBLによる評価方法が提唱されている「社会人基礎力」を評価項目として、本授業における各活動に対するねらいの学生達成度評価を試みた。社会人基礎力の評価2010年度の「スポーツマネジメントの実践」の履修学生は、6名(男子学生4名、女子学生2名、全員3年生)であった。学生のスポーツ教室運営補助への参加は、全部で6回(初回は見学、毎回の教室参加者および種目は異なる)であった。毎回のスポーツ教室終了後に、学生には翌週の授業までに「スポーツ教室体験報告書」の提出を義務付けた。また、6回に亘るスポーツ教室の終了後には、学生に運営補助者としてスポーツ教室に参加して学べたと思える点を、「事前ミーティング」、「会場準備・片付け」、「参加者対応」、「スポーツ教室補助」、「情報収集・発信」、「振り返りシート」および「その他」の観点から「スポーツ教室振り返りシート」に記述させた。そして、記入用紙回収後に教員がその記述内容を読み込み、教員が設定した各活動に対するねらい(その活動を通じて学生に発揮することを期待する能力)について、「発揮できた」、「何とか発揮できた」、および「「発揮できなかった」の3段階で評価した(表1)。評価表から読み取れる内容として、第一に、事前に打ち合わせられ、自分に課せられた仕事に関しては、学生は計画的に実行できたと感じている点である。したがって、事前ミーティングの有用性を学生達は認識していると考えられる。第二に、事前の打ち合わせになかった想定外の場面に接した際に、学生は状況を把握し臨機応変に行動できなかったと感じている点があげられる。事前ミーティングで触れられなかった場面も想定しておくこと、さらには施設、備品、運営組織等の情報を広く得ておくことの大切さを実感していると考えられる。第三に、スポーツ教室の参加者・指導者への対応が思うようにできなかったと感じていることが確認できた。評価表を見ると、学生個人に対する仕事の達成度は比較的良好であるのに対し、第三者への対応に関する仕事となると、十分に力を発揮できていないと判断していると読み取れる。第四に、振り返りシートを活用し、学生の学びをまとめる、あるいはスポーツ教室運営上の課題を発見し改善につなげることができなかったと感じていることがみられた。課題を認識し、その存在を文章化するなどして情報発信する。そして周囲を巻き込み課題解決へのプロセスを進める、いわゆるPDCAサイクルを進める実践力が定着していないことが考えられる。今後に向けて大学教育に対し、実践型の教育あるいは双方向性授業の展開等が求められている今日、社会人基礎力という概念を活用した実践型学習は、知識教育⇒知識の活用⇒実践教育⇒学ぶ意欲といった理論と実践の融合による成長の好循環を生み出すことが期待され、取り組むべき1つの方法であると考えられる。本研究において、社会人基礎力に基づき実際に授業評価を試みたところ、学生と教員間で授業における到達目標や到達度の共有を行える方法であることが確認できた。今回は、第一段階としての検証を行ったが、今後は学生の育ちのポートフォリオの一環として、事前、中間および事後評価の実施や評価の学生へのフィードバックなど、活用方法の検討が必要となろう。参考文献学生の評価:○・・・発揮できた/△・・・なんとかできた/×・・・発揮できなかった表1.スポーツ教室の運営補助を通じて培われる社会人基礎力の評価活動内容活動のねらい社会人基礎力学生の評価学生のコメント○△×事前ミーティング各自が当日の流れを把握し、役割を知ることでイベント実施に向けて主体的に活動できるようにする。主体性実行力○事前ミーティングを行うことで、作業内容や当日の流れが確認できてスムーズに動けた。学生からもっと意見が出ると良かった。各自がイベントの内容全体を理解することで、担当間の連携を強化し、円滑な運営を行えるようにする。計画力状況把握力○自分では気がつかない参加者のことや細部について検討できた。各自の作業内容を確認することで、事前準備の進行状況も確認できるようにする。課題発見力創造力○事前準備で不足している点が確認できた。前回の反省を活かして次回の改善点について話しあうことができた。会場準備会場準備を通じてスポーツ教室が効率良く、効果的に実施できるようにする。実行力計画力○当日にマットが汚れていたり、ペンが書けなかったりした。用具や備品の準備は、使う人の視点で行うことが大切だった。受付の役割を考え、その機能を果たせるようにする。実行力計画力○受付は開始時間近くになると混雑したが、レイアウト次第で人の流れを整理することができた。テント設営の作業手順の理解と相互協力が円滑にできるようにする。計画力働きかけ力○テント設営は、初めは組み立て方が分からなかったが、次第に理解でき協調性も生まれた。テント設営等により、スポーツ教室参加者の利便性・快適性を配慮できるようにする。ストレスコントロール力創造力○夏場の水撒きや氷の準備、保護者へのお茶の提供などは自分達では考えつかなかった。案内板や横断幕・フラッグ等の設置により、会場の雰囲気を高められるようにする。実行力創造力○横断幕やフラッグの設置で会場の雰囲気が変わった。もう少し案内板があっても良かった。工具・用具や備品の正しい使い方を知り、効率的に作業が進められるようにする。実行力○紐の結び方を何度も注意された。参加者対応小学生から保護者あるいは指導者まで、臨機応変な幅広い対応ができるようにする。柔軟性規律性○状況に応じて失礼のない言葉遣いや気遣いが必要だと感じた。自分の考えているような十分なサービスができなかった。参加者とのコミュニケーションから、新たな課題の発見やアイディアを創造する。傾聴力課題発見力○こちらが必要とする情報を集めることは大変だった。スポーツ教室指導補助自らが補助することで、円滑な指導やイベントの運営が行えるようにする。状況把握力実行力○ボールを拾うなどの最低限のことしかできなかったので、指導者との打ち合わせも大切だと感じた。情報収集情報発信を意識して写真撮影、アンケート調査を行い、有効な情報収集が行えるようにする。実行力傾聴力○アンケートは様々な情報が得られるので有効だと思うが、リピーターに対する配慮も必要だと感じた。会場撤収参加者の安全性に配慮しながら、作業手順の理解と相互協力のもと円滑に撤収作業が進められるようにする。実行力状況把握力○片付け作業は準備作業の逆の手順だったため早く進められた。備品等を次回使用時のことを考慮して片付けられるようにする。計画力○学生が備品等の保管場所を把握していればもっとスムーズに対応できたと感じた。情報発信収集した情報を、読者を意識して効果的に発信できるようにする。発信力創造力○ブログにて教室の様子を文章で的確に伝えるのは難しかった。振り返りシート各自の活動を振り返り、実践による学びや確認事項を記録できるようにする。課題発見力○時系列で振り返るのはやりやすかったが、シートにうまくまとめられなかった。問題点や課題等を抽出し、次回までに検討できるようにする。課題発見力計画力○提出期限に間に合わずに、提出するだけで終わってしまったのが残念だった。16


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