SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3 FEATURE「湘南から世界へ」


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大学教育において育成すべき資質・能力経済産業省は2006年2月に、我が国経済を担う産業人材の確保・育成の観点から、将来の日本を支えるべき若者が社会の変化に対応でき、職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力を、3つの能力と12要素からなる「社会人基礎力」として提唱している。社会人基礎力は、前に踏み出す力(アクション)」、考え抜く力(シンキング)」および「チームで働く力(チームワーク)」の3つの能力を抽出し、各能力に、主体性・働きかけ力・実行力、課題発見力・計画力・創造力、および発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコントロール力を要素として取り入れている(資料1)。わが国の大学におけるスポーツマネジメント教育の現状スポーツマネジメントとは、「スポーツ活動そのものを生み出すスポーツ組織におけるマネジメント」として解釈されている(松岡2010)。ここでいう「スポーツ活動そのもの」とはするスポーツとみるスポーツを、また、「スポーツ組織」とは生産と提供にかかわるビジネスを行う組織を指している。わが国の大学においてもスポーツマネジメントの人材養成が行われている。履修科目には、「スポーツマネジメント」をはじめとし、「スポーツマーケティング」や「スポーツ施設・イベントのマネジメント」などがある。しかしその一方で、スポーツマネジメント教育は理論と実践のバランスを取ることが重要とされながらも、インターンシップやボランティア、あるいは近隣のスポーツ組織を活用したPBL(ProjectBasedLearning)を十分にできない課題も抱えている大学も存在する(松岡2008)。本学授業科目「スポーツマネジメントの実践」本学は、2004年から株式会社湘南ベルマーレと提携関係を結び、スポーツマネジメントに関する情報マネジメント学部の授業科目の共同開発、大学の行事や学生の課外活動への協力など、数々の実践的な取り組みを展開している。さらに2008年には、伊勢原周辺地域の在住者を対象に、スポーツ教室を開催した。そして、2009年度からはスポーツ教室の場を活用し、スポーツマネジメントに関連する講義で学び得た知識や情報を実際のスポーツイベントの場で活用し、学習内容の確認や新たな発見をすると共に、マネジメント技法の応用確認を目的とした授業科目である「スポーツマネジメントの実践」が開講された。この授業を履修した学生は、月に1回開催されるスポーツ教室の運営補助として現場スタッフと協力をして活動を行う。そして、スポーツ教室実施後には、学生が経時的にスポーツ教室の内容を振り返る「振り返りシート」を用い、問題点の抽出や改善案を検討し、次回の実習へとつなげていく授業形式を取っている。履修学生は、スポーツ教室の体験を通じた様々な気づきから成長する姿を見せる。しかし、本授業で教員および学生が感じるその成長は、主観的あるいは抽象的な評価であり、客観的あるいは定量的・定性的な評価を行うには至っていない。本学が株式会社湘南ベルマーレと協働で実施している「産業能率大学collaborationwith湘南ベルマーレスポーツ教室(以下、スポーツ教室と略する)」において、本学学生がその運営に参加することで、経済産業省や本学の育成する人材像で表現されている「社会人基礎力」への気付きやマネジメント能力の高まりの獲得が期待される。そこで、前述のスポーツ教室運営に参加した学生を対象に、「社会人基礎力」および「マネジメント能力」に関する聞き取り調査を行い、それらの気付きや高まりの検証を行った。資料1.社会人基礎力とは(経済産業省2007)3つの能力/12の能力要素一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力多様な人々とともに、目標に向けて協力する力疑問を持ち、考え抜く力主体性働きかけ力実行力他人に働きかけ巻き込む力目的を設定し確実に行動する力物事に進んで取り組む力発信力情況把握力傾聴力規律性柔軟性ストレスコントロール力相手の意見を丁寧に聴く力社会のルールや人との約束を守る力意見の違いや立場の違いを理解する力ストレスの発生源に対応する力自分の意見をわかりやすく伝える力自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力課題発見力計画力創造力課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力新しい価値を生み出す力現状を分析し目的や課題を明らかにする力前に踏み出す力(アクション)考え抜く力(シンキング)チームで働く力(チームワーク)渡邉隆嗣/情報マネジメント学部教授中川直樹情報マネジメント学部准教授スポーツ教室の運営補助を通じて培われる社会人基礎力0715


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