SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2010年 Vol.3 FEATURE「湘南から世界へ」


>> P.14

転換期にある我が国のプロ・スポーツ日本のプロ・スポーツは今大きな転換期を迎えている。バブル崩壊、リーマンショック以降、多くのプロ・スポーツで撤退、廃部、縮小が相次いだ。こうした傾向は、今回の東日本大震災によってさらに強まっていくことが懸念される。もちろん景気後退が主要因であるが、プロ・スポーツが縮小している最大の理由は、親会社に依存した、いわゆる企業スポーツが日本におけるプロ・スポーツのメインストリームだったからに他ならない。プロ野球をはじめ、サッカー、バレーボールなど我が国のプロ・スポーツの多くはスポンサーの安定的なサポートによって成立しているところが多い。それゆえスポンサーの経営が悪化すると、廃部、撤退が多くなる。特に、マイナースポーツを支えてきた企業にこうした傾向が強く、オリンピックでメダルを獲得したソフトボールですら厳しい状況に置かれている。日本がスポーツにおいて、今後も一定の成果を目指すのであれば、国レベルでの振興策や強化を含めた早急な対策が必要となろう。こうした厳しい状況下で、多くのプロ・スポーツ(リーグ)が懸命に取り組んでいるのが、大手スポンサーによる経営からの脱却と地域密着の強化による財務体質の強化である。プロスポーツビジネスにおいて、地域密着型のビジネス展開は決して新しい考えではない。例えば、アメリカのメジャーリーグ、ヨーロッパのサッカークラブなどは、その名称の中に地域名を入れ、その地域にいる人々は地元チームを熱狂的に応援するという構図が定着している。日本でも以前から地域密着は謳われてきたものの、プロ野球(NPB)に象徴されるように企業スポーツとしての色合いが濃く、それに慣れた日本では、地域やそこに住む個人でチームをサポートしていこうという意識は乏しかった。しかしそのプロ野球も、近年は日本ハムの北海道移転や楽天の仙台移転など、より地域にこだわった運営が志向される傾向が強まっている。また、Jリーグは1993年の発足当初から「Jリーグ百年構想~スポーツで、もっと、幸せな国へ~」というスローガンを掲げ、「地域に根差したスポーツクラブ」を核としたスポーツ文化の振興活動に取り組んできた。こうした地域に根差したスポーツチームづくりは世界的にも幅広く採用されており、プロスポーツチームは地域経済とも密接に関わる存在となっている。そこで今回は、日本における地域密着型経営の現状を踏まえ、bjリーグを中心として、今後の企業スポーツのあり方について検討してみたい。地域密着型の成功例日本でも、地域密着型の成功例は存在する。Jリーグのアルビレックス新潟である。現在、アルビレックス新潟の観客動員はJリーグでもトップクラスにある。ホームゲームの一試合平均動員数は約30,000人(2010年度)を誇り、この数値はJ1平均18,000人を大幅に上回っている。それまでは不毛の地とすら言われるほどのレベルであった新潟という地にサッカーが根づいたのは、2002年日韓共同開催のワールドカップがきっかけであった。新潟はワー01020304050602008年2007年2006年2005年2004年2003年2002年2001年2000年1999年1998年1997年1996年1995年1994年1993年1992年1991年企業スポーツの休廃部数の推移出所:㈱スポーツデザイン研究所調べを筆者がグラフ化日本のプロ・スポーツが抱える課題ーbjリーグを中心としてー木村剛情報マネジメント学部准教授0613


<< | < | > | >>