SANNO SPORTS MANAGEMENT 2009年 Vol.2

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2009年 Vol.2 FEATURE「産業能率大学 collaboration with 湘南ベルマーレ」


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湘南ベルマーレの「双子ピラミッド」費用対効果を超える大切な財産現社長の眞壁氏は、湘南ベルマーレの運営に携わる前、平塚競技場に自社の看板を出した経験がある。このとき「単純な費用対効果でいったら、サッカーの試合というのは広告を出す価値があるのか疑問だ」と感じたという。だがこの経験が逆に、ショービジネスではなく、クラブへの愛着によって、人々が自然とスタジアムに運ぶような状況を創り出さらなくてはならないという発想へと転換されていく。ベルマーレ平塚存亡の危機の際、赤字の育成・普及部門がまず槍玉にあがった。だが眞壁氏は決してそこを切ろうとはしなかった。なぜなら「地域に助けてもらったベルマーレが、地域の子供たちのところから手を引くことは背任行為に等しい」と考えたからだ。そして、この「一番大切なのは地域の子供」という理念が、現在のマネジメントへと直結していくのである。「強いチーム」と「地域密着」の双方を探求地域の子供たちのためを思ったとき、まず眞壁氏の目に飛び込んできたのは、不況の煽りを受けて縮小や中止を余儀なくされている「ちびっ子スポーツ大会」であった。『Jリーグ百年構想』は「サッカー」にこだわっていない。そこでJリーグに助成金を申請し、駅伝大会やバレーボール大会を主催して地域を盛り上げていった。これを大人にまで拡大し、様々な競技を地域の人々が楽しめるようにしたいとの思いが『総合型地域スポーツクラブ』の原点である。だがそれらの運営も当然コストがかかる。関係者からは「少ない予算しかないのに、なんでサッカー以外のことまでやるんだ」という抵抗があったという。確かに、地域密着も大切だが、サッカーを応援している人たちのお金を別の目的に使うわけにはいかない。そこで考え出されたのが、財布を別にする、すなわち「株式会社湘南ベルマーレ」とは別に「NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」を作るという『双子ピラミッド』方式である。この方式を採用することにより、「J1復帰を目指す強いサッカーチーム作り」と「地域に密着する湘南ベルマーレ」の2つの目標を、同時に志向可能となったのである。産業能率大学サッカー部の強化人材育成「U-18」という篩(ふるい)湘南ベルマーレの『双子ピラミッド』では、図にもあるように、U-18とU-15とは峻別される。前者はプロ契約、つまり湘南ベルマーレが勝つためのカテゴリーである株式会社に所属する。これに対し、後者はサッカーが上手くなりたい中学生であれば、費用を負担すれば参加できるNPO法人所属というように、厳格な違いが存在するからである。更に、U-18からTOPに上がれる選手は、1人か2人である。ところが、サッカー選手の中には“遅咲き”の選手も少なくない。その可能性がある選手を拙速に手放すことは、本人の夢や希望の芽を摘むだけでなく、クラブにとっても大きな損失となる。また現役のプロ選手に対しても、彼らの将来設計について、クラブが十分にサポートしきれていないことが課題に挙げられていた。大学の活力アップとキャリア育成惜しくもプロ契約に至らなかったが、ポテンシャルは秘めているU-18世代を、産業能率大学は特別推薦入試で受け入れ、ユースとの相互交流を図る育成プログラムを湘南ベルマーレと開始した。こうすることで、大学は優秀なサッカー部員を得られるばかりでなく、他の部員も湘南ベルマーレユースチームのコーチから直接指導を受けられるため、目標とする上位リーグ昇格の現実味が増す。そして湘南ベルマーレも、有望な選手を手放すことなく、さらに能力を高めた上でプロ契約する可能性を残すことができるのである。また彼ら学生自身も、産業能率大学でマネジメントの専門教育を受けることにより、仮にサッカー選手としてのプロ契約がかなわなくとも、スポーツビジネスのプロとして社会に巣立つという別の道が拓ける。現在ではこの活動が発展し、スポーツマネジメント研究所では、産業能率大学サッカー部員を対象とした人材育成プログラムの実施を試みている。選手育成におけるコラボレーション文・SANNOSPORTSMANAGEMENT編集部UNIVERSITYFOOTBALLCLUB037FEATURE「産業能率大学collaborationwith湘南ベルマーレ」


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