SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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3.研修の効果と今後の課題2018年度のリーダーシッププログラムでは、2017年度に比べ、受講者層や内容についていくつかの変化があった。まず受講者層について、2017年度はサッカー部員のみを対象としたが、2018年度はその他の運動部員も研修に参加したため、受講者層に多様性が生まれた。同じ「運動部員」でも競技によって、あるいは部が置かれている状況によって、リーダーシップの発揮の仕方や部が抱えている課題が異なり、研修中の受講者相互の対話では、リーダーシップのとり方に対する様々なスタンスや考え方が共有でき、サッカー部単独で実施したとき以上に、受講者はリーダーシップの発揮の仕方に関する多様な視点を獲得できたと考える。次に、2018年度は、「チーム活動の実践」フェーズにおいて「レゴの高積み」や「創作サンドイッチ」演習など、個々人がチームの中で効果的にリーダーシップを発揮しながら、制限時間内に成果を出すことができるかを競い合うアクティビティを複数取り入れた点に、2017年度との違いがある。これらの演習は、受講者にとって興味関心を惹くような内容にすることや、チーム同士の「競争」を促すことを意識して企画したため、2017年度に実施した「チーム活動」(サッカー部の問題解決活動)に比べ、受講者の参加姿勢がより積極的になったと感じられた。実際の競技でも常に対戦相手との競争を意識しなければならない運動部員にとって、「競争」を意識させる演習を導入したことは効果的であったと考える。たとえ研修の中のアクティビティであっても常に「勝ちにこだわる」姿勢を植えつけていくことは重要であると考えており、引き続き、個々の運動部員がチーム活動を通してリーダーシップを発揮できる演習を考案・試行することが今後の課題である。一方で、こうしたユニークなアクティビティを導入したことで、受講者は演習内容の面白さにばかり意識が奪われてしまい、チーム活動の中で発揮すべきリーダーシップ項目に対する注意が薄れてしまうといった問題も見受けられた。アクティビティのユニークさは残しつつも、常にリーダーシップ項目を意識しながら演習に取り組ませるようにするにはどのような方法が考えられるかについて検討することも今後の課題である。創作サンドウィッチ演習の優秀作品「インスタ映えする&美味しいサンドウィッチを作る」というミッションを踏まえて、細部にわたり、こだわりを持って作成された。25「レゴの高積み」演習の様子③実践の振り返りと概念創作サンドイッチ演習の様子3人一組になり、与えられた素材を使って、講師が提示するミッションに即したサンドイッチを作る(ミッションの例:用意されている素材・備品を用いて、50分で、「インスタ映えする&美味しいサンドイッチ」を作り、インスタグラムにアップする。)前述の通り、受講生が楽しく取り組めるよう、チーム活動の演習には「遊び」の要素を取り入れたが、演習実施後は、単に「勝った」「負けた」で終わるのではなく、何がうまくいった要因なのか」、「何がうまくいかなかった要因なのか」、「どうすればより質の高い成果を出すことができるか」をチームごとに振り返らせ、それを「言葉」で書き出し、他者に説明するリフレクションの時間を重視した。また、研修の事後課題として毎回、「チーム活動で意識したリーダーシップ項目」や「あまり発揮できなかったリーダーシップ項目」、自分が果たした役割」などを「活動振り返りシート」に書き出させ、活動プロセスを内省させた。こうしたリフレクションを繰り返し、その後、再度同様のアクティビティに取り組ませることで、活動に質的な向上が見られたチームも見受けられた。


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