SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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の中から「日本代表に必要な選手」を10人以内で選んでもらい、自身が選んだ各選手について、必要な理由として当てはまるものを8項目の中からすべて選んでチェックしてもらった。ランキングは通常、絶対数を基準に「支持度」【表3左】として作成するが、データマイニングの手法を用いれば、その理由に特化した選手を「確信度」【表3右】として文字通りマイニング(発掘)することも可能であり、コアなファンをも唸らせることができる。第2のテキストマイニングは、データマイニングをテキストすなわち定性分析に応用させた手法である。こちらも今日では『ユーザーローカル』(https://textmining.userlocal.jp/)のような無料Webアプリも開発され、学生たちも手軽に実行できるものとなっている。ただし、形態素や基本的アルゴリズムにはなかなか学生の関心は向かない。だが【図2】のようにサッカー日本代表が分析対象であると、彼らは目を輝かせて熱心に分析に取り組んでくれる。第3のシミュレーションは、筆者の想像を超えた事例である。調査結果(国民が代表に推したい選手)を参考にしながら、テレビゲーム『ウイニングイレブン』(コナミデジタルエンタテインメント)を用いて、仮想的なW杯で日本代表がどの程度の戦績を残すかを検証する学生チームが現れた。この研究は所与のゲーム設定を前提としている課題は抱えるものの、学生たちが普段は娯楽のツールとしてしか考えていないテレビゲームを、研究用途に応用した画期的な事例であると同時に、「eスポーツ」の新たな可能性を拓くものとして筆者を驚かせた。今回は紙幅の関係上、五輪調査とサッカーW杯調査の事例紹介にとどまるが、スポーツが持つ学際教育のポテンシャルの高さを、上記2事例だけからでも十分に理解することができるに違いない。表3.日本代表に必要なサッカー選手の要素別1位図2日本代表に選びたい理由のテキストマイニング結果(左上:岡崎慎司選手、右上:長友佑都選手、左下:川島永嗣選手、右下:内田篤人選手)<参考・引用文献>1)Funk,DanielC.andJefferyD.James(2006):ConsumerLoyalty:TheMeaningofAttachmentintheDevelopmentofSportTeamAllegiance”,JournalofSportManagement,20,189-217.2)小野田哲弥(2009):「社会的「期待̶一致/不一致モデル」に基づく北京オリンピック日本代表選手の評価類型」,『スポーツ産業学研究』,19(2),185-196.3)単純集計とは調査対象を100%として該当率を「(ある選手の)認知率」のように算出する演習、クロス集計とは性別・世代・地域などの異なる属性によって差を比較する演習であり、後者は学生の理解度に応じて統計的有意検定まで教えても良いだろう。4)ちなみに【表2】において2010バンクーバー五輪の4位の係数が大きい理由は、日本代表選手の金メダル獲得がなかった大会であることに加え、長きにわたり女子モーグルを牽引してきた上村愛子選手の健闘が讃えられたからと考えられる。また2016ソチ五輪の6位の係数の大きさは、女子フィギュアスケートのショートプログラムで15位と不調だった浅田真央選手が、フリープログラムの演技で自己最高得点を叩き出し、国民的な感動を呼んだことが背景にある。5)たとえばサッカーW杯調査では、応援しているJリーグクラブとの関連性、スタジアム観戦経験やサッカー用語の認知から「コアファン」「ライトファン」「一般層」にユーザを分類した上での比較分析などを行った実績がある。小野田哲弥(2014):「日本におけるサッカー文化の成熟に向けて-ファンの3階層モデルに基づく事例研究-」,日本マーケティング・サイエンス学会第96回研究大会,筑波大学東京キャンパス.21


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