SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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08学際教育としてのスポーツの可能性情報マネジメント学部教授小野田哲弥価値観が多様化した現代社会において、オリンピック(以下、五輪)とFIFAワールドカップ(以下、サッカーW杯)は、大多数の国民が共通の話題として盛り上がることのできる数少ない国民的行事の双璧である。筆者は本研究所において両スポーツ祭典に関する世論調査を担当してきた。当該調査の特長は、一般の人々でもその結果を享受できるところにある。本レポートでは、一般的な大学生がデータ分析を楽しく学び、研究の面白さを知る上で果たす両調査の貢献を、筆者の経験をもとに報告したい。1.調査の概要五輪およびサッカーW杯に関する調査は、即時性の観点からインターネット調査を利用し、最新の人口統計比に基づくサンプリング(都道府県別の性別・世代区分からの層化抽出)を行った上で、大会の開幕直前(N=10,000)と閉幕直後(N=1,000)に行っている。調査内容は主に分析対象となる日本代表選手に関する質問である。本研究の独自性として、日本代表の全選手を対象に調査を実施している点が挙げられる(ただし開幕後の追加招集や出場辞退等の例外あり)。調査フレームは「4Aモデル1)」(Funk&James2006)を参考に、事前調査でAwareness(認知)とAttention(注目)を測る質問を実施し、事後調査ではAudience(視聴)とAdmiration(称賛)を測る質問を実施している2)【図1】。図1オリジナルの「4Aモデル」と筆者がアレンジした「4Aモデル」2.五輪調査を用いたデータ分析演習最初に五輪調査の教育的意義について、データ分析演習を例に述べたい。当該データは、初歩的な「単純集計」、ベーシックな「クロス集計」から、やや発展的な内容まで幅広く活用できる。本稿では「正規化」「相関分析」「回帰分析」の3つについて紹介したい3)。第1の正規化は、異なる尺度をならすために必要な処理として理解できる。本調査の4フェーズ【図1】は、認知と視聴は百分率なのに対し、注目と称賛は程度を尋ねるリッカート尺度だ。したがって4指標すべてを同じ解析で扱うためには「正規化」を修得しければならない。第2の相関分析は、「相関」という言葉自体は身近であるが、相関係数が-1.0から+1.0のレンジを取ることは案外理解していない学生が多い。日本代表選手を対象(この場合のN)とした4フェー20ズ間の相関係数は【表1】のように極めて高い正の相関係数(すべて0.00%有意)という課題は抱えるが、相対的に「認知×注目」の相関係数が高いことは感覚として理解しやすく、「認知×称賛」「注目×称賛」の値がやや低い点も、競技結果は必ずしも期待通りとはいかず、逆に予想外の選手が好成績を残す場合もありうることから自然な解釈を助ける。そして最後の回帰分析についても、中等教育時点でY=aX+b型の方程式を学んでいることから、目的変数(従属変数)をYとし、それを説明する変数が説明変数(独立変数)Xであるという概念自体は理解されやすい。多変量解析ではその方程式が長くなり、X1、X2、X3…ごとに係数が変わるため手計算はほぼ不可能だが、統計アプリを用いれば容易に算出できる。【表2】は「称賛」を目的変数とし、競技結果を説明変数として回帰分析を行った結果である。この結果から、メダル獲得(3位以上)の影響はそれ以下とは別格である点や、例外的な大会4)についてその要因を探るなど、物事を定量的に捉える楽しさを修得することができる。表1.「認知」「注目」「視聴」「称賛」間の相関係数表2.「称賛」の競技成績による回帰分析3.サッカーW杯調査を起点にした研究への展開次にサッカーW杯調査の意義についても紹介したい。五輪調査第1のデータマイニングは【表3】の例に見ることができる。この表は2018年のロシアW杯の最終メンバー発表前に実施した調査の要素別ランキングである。あらかじめ用意した208選手


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