SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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図表2.Bリーグのチーム人件費と成績の関係いったシステムを整備し、下位のチームでは若い選手を育成しつつ、時間をかけて徐々に人件費を強化していくしかない。ちなみに世界有数のクラブであるレアル・マドリードやバルセロナの人件費総額は2400万ユーロ(約3000億円)を超えていると言われており、こうしたクラブチームとFIFAクラブワールドカップなどで戦うことを考えると、金額的にはJリーグもまだまだ伸張の余地はある。次にBリーグについてみてみよう。図表2はBリーグの2017-18シーズンのB1クラブの決算書から作成したものである。B1の人件費トップはアルバルク東京の約5億2000万円で、最も低いクラブは西宮ストークスの約1億1300万円であった。4億円の開きは大きい。B1クラブの平均金額は約2億8000万円となっている。尚、Bリーグは東地区、中地区、西地区の3地域に分かれているため、比率は算出していない。このデータを見ると、やはり人件費と成績の相関は高い。特に元NBLのクラブは強力なスポンサーを有しているクラブが多く、元bjリーグのクラブはB1リーグ平均以下のところがほとんどである。Bリーグも3年目を迎え、次第にその格差は縮小してはいるものの、その格差は厳然として存在している。逆の言い方をすれば、プロ・バスケットクラブを運営する側は、3億円以上の人件費を確保しないと、優勝争いには絡むことは難しいといえる。3.経営の安定化とチーム強化勝利第一主義は正しいか。これはプロ・スポーツクラブに課せられた永遠の課題である。結論から言えば、YesでもありNoでもある。より多くのファンを獲得し、広告効果をより高めるためにも、優勝争いを目指すのはプロのクラブとして正しい姿と言える。時間をかけて、経営を安定させ徐々に経営規模を拡大し、チーム人件費中心に投資額を増やしていくことは不可欠であり、その点においてスポーツの経営も一般の企業の経営も変わりはない。しかし、その一方で成績が振るわなければ、存続は不可能かと言えば、必ずしもそうとはいえない。「優勝争いをすること」と「ファンの満足度を高めること」は、リンクしている部分とそうでない部分がある。ファンと共に成長していく。ファンと共に苦楽を共にする。そうしたファンとの一体感を醸成していくこともプロ・スポーツでは重要な要素である。難しい課題ではあるが、これこそが、一般企業とプロ・スポーツクラブの決定的な違いである。成績とファンの満足度を高めることは相反するものではない。スポーツ・マネジメント独特の領域と言えるこの課題に対してどのようにアプローチすべきなのか、今後も考察を続けていきたい。(C)B-CORSAIRS/T.Osawa(C)B-CORSAIRS/T.Osawa<参考・引用文献>1)2017年度J1クラブ決算一覧・JリーグURL:https//www.jleague.jp/docs/aboutj/club-h29kaiji.pdf2019年6月1日アクセス2)(2017年度)クラブ決算概要・B.LEAGUE(Bリーグ)URL:https//www.bleague.jp/files/user/about/pdf/financia_settlement_2017.pdf2019年6月1日アクセス19


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