SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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04Victoryを取り戻す戦い〜横浜ビー・コルセアーズの挑戦〜インタビュー・文:木村剛たプランであった。自らが率いてから最初の5年を1つのフェーズとして捉え、その間に経営を安定させていきたいというプランである。昨年のインタビューで、岡本CEOは次のように述べている。「まだまだ足りないところだらけで、目につくところ全て満足していません。まだ普通の体に戻るには時間がかかります。」特に、岡本CEOが気にかけていたのが、集客であった。より多くの人に横浜ビー・コルセアーズの試合に来てもらい、ファンになってもらう。そのためには何をすればよいのか。今でこそ、徐々に注目を集めてきているバスケットボールだが、bjリーグの時代は、知名度の低さから集客も芳しいものではなく、平均観客数は1500人程度であった。しかしBリーグになったことで5000人収容のアリーナ(B1の参入条件)を抱えるところからスタートし、このアリーナを満杯にすることが求められた。このとき、岡本CEOはスタッフに次のように呼びかけたという。「もしも、お客さんが入らないことをチームの成績のせいにしたら。それはフロントの負けだぞ」およそスポーツである限り、チームの成績はついてくるものである。成績不振で観客が減ってしまうことは当たっている部分もある。しかしこの点に対して、岡本CEOの考えは異なっている。それはスポーツ観戦のチケット代の持つ最低限の価値を次のように定義していることによる。「お客様は、試合に来る前にチケット代を払ってくれているんです。チームが負けたときに得るものがなかったら、詐欺みたいなものじゃないですか。入場料は、会場で時間を過ごししただけで、ある程度はペイできるものにしておかなければいけない。その上で、チームが勝ってくれたら付加価値が付く、と」様々な施策を実施したこともあり、横浜の集客数は現在Bリーグでも上位に入っている。残念ながら成績はそれに伴っていないが、成績に関係なく集客できたことは注目に値する。前述の通り、横浜ビー・コルセアーズはBリーグ開幕から3シーズン連続の残留プレーオフに回るなど成績がついてきていない状況にある。しかし、いつまでも弱いままではブースターはついてきてくれない。第1フェーズから第2フェーズへ、新たなステップを踏み出す段階に差し掛かっている。経営の安定と、集客力の維持そしてチームの成績、この3つのバランスをいかに図っていけばよいのか。こうした点について、今シーズンの振り返りと来期への展望について岡本CEOからお話を伺った。3.岡本CEOに聞く今シーズンの総括と来期への展望3-1.今シーズンの総括ーーまずは、B1残留おめでとうございます。横浜ビー・コルセアーズCEO岡本尚博様1.Victoryからの転落横浜ビー・コルセアーズはかつて、日本一を経験しているクラブである。2010-11シーズンにbjリーグ(当時)に参加したビー・コルセアーズは、参入初年度にプレーオフ進出(リーグ3位)、2年目には有明アリーナで決勝を勝ち抜き日本一となった。当時、純粋なプロリーグはbjリーグのみであり、その意味で横浜ビー・コルセアーズは日本一のプロバスケットクラブとなったわけである。まさにVictoryを手にした瞬間であった。しかし、その栄光は地に落ちた。経営破綻をきっかけとして成績が低迷、以降、bjリーグでは一度もプレーオフに進出することはなかった。そして3年前、NBLとbjリーグが統合して、Bリーグ」が誕生した。願ってもないB1からのスタートで心機一転、飛躍が期待されたが、3年連続で残留プレーオフにかかってしまうなど苦戦が続いている。では何故、一度はつかんだ栄光から一転、長期低迷に陥ってしまったのだろうか。かつての栄光を取り戻す戦いを続けている運営サイドからお話を伺うことで、この疑問について掘り下げてみたい。2.集客を成績のせいにしたら負け横浜ビー・コルセアーズは、2年目にbjリーグチャンピオンとなって以降、低迷を続けている。細かな理由はいくつかあるが、根本的な課題は経営状態にあるといっても過言ではない。現経営陣が経営を引き継いだ段階で、スタッフや選手への給料の未払いやチーム運営に関わる多くの会社からの督促が届くなど、実質的な破産状態であった。株式の一般公募など、どうにかしてチームは存続することができたが、ゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタートであったことは間違いない。こうした状況を考えると、いきなり優勝争うチームづくりというのは難しい。まずは経営基盤を安定させ、そのうえで次のステップに進んでいく。そうした段取りと時間が必要となる。これは、岡本CEOが当初から思い描いてい12


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