SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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勝てればいいけれど、それは難しい。そうなると勝敗に依存しない形でいかにお客様の満足度を高めることができるかを大切にしてきました。もちろん勝ち負けだけが満足度であるという人たちもいます。ですが、それだけにならず野球観戦という体験自体に満足感を覚えていただくこと、私たち事業側はそこの質を高める努力をすることが大切です。お客様に足を運んでもらい、そこで得られる体験をちゃんとクオリティ高いものとし、お客様が求めているものをご提供するということですね。ーー④を③にする上で、勝敗に左右されないサービスやプロジェクトというのは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?わかりやすいところですと飲食ですね。3時間という時間とスタジアムという空間でお客様が求めているものとどうリンクし、クオリティの高いものを提供できるか。たとえば選手が寮で食べているカレーを提供してみたり、試合観戦の付き物となっているビールや売り子さんによる販売をいかにアップデートできるか、まずはそういうところが挙げられます。球界では先がけて、オリジナルビールも開発・販売を始めています。ーー近年商品開発・販売されているメンチカツや餃子は?上述の通り「オリジナルビールに合う」という考えのもと開発しました。野球観戦に「飲食しに来る」ということはあまりないはずです。となると「野球観戦にあった食べ物」を提供することがニーズに則していることになると言えます。たとえば球場でラーメンを美味しく食べながら楽しく応援・観戦できるかといえばそれは厳しい。そうなると必然的に席で気軽に食べられるものとなります。「ベイ餃子」に関していえば醤油やタレを付けずに食べられる味付けにしました。チキンレッグなどもそうです。「ウィング席」はわかりやすく客席を増やすという意図です。2020年にはレフトのウィング席も完成する予定です。さらにもう1つは来シーズン完成予定なのですが横浜スタジアムの外周を回遊できるデッキを作っています。これは試合が行われてない日も活用できる場所、「日常使いできる横浜スタジアム」を目指している意図があります。ウィング席などの増築は野球をやっている日により多くのお客様に足を運んでもらって満足度を上げることが目的であり、「NISSANSTARSUITES」もまた今のところの段階では試合観戦時のみの利用です。行く行くは一種の横浜の社交場みたいな場としても使ってもらいたいと思っています。横浜スタジアムはみなとみらいにも近く、ホテルなどのレストランのように綺麗な夜景が望める場所です。「NISSANSTARSUITES」もそういう使い方のポテンシャルを秘めていると考えています。たとえば、試合をやってない日も「NISSANSTARSUITES」は稼働していて、個人でも団体でも利用していただく。そんな日常から使える横浜スタジアムとなることを目指しています。ーー回遊デッキはどのような意図でしょうか?回遊デッキはどちらかというと「BtoC」向けの日常使いのイメージです。横浜スタジアムはレギュラー試合で年間70数試合で、オープン戦・ポストシーズンを含めても80試合くらいです。つまり年間の2割くらいしかプロ野球は開催されておりません。現状では試合以外に一般の人たちが一生懸命足を運んでくるような場所ではありません。それを回遊デッキなどを整備することによって「今日野球やってないけど、横浜スタジアムに遊びに行こう」とか、「買い物に行こう」、「ランニングしようとおもうけど横浜スタジアムを拠点にやろう」などのように、日常使いしてもらえると、横浜の街にとって大きなメリットになるだろうと思ってます。ーー2019年から設置された個室観覧席「NISSANSTARSUITES」や外野の「ウィング席」はどのようなものであり、どのような意図から新設されたのでしょうか?「NISSANSTARSUITES」は先にあげたピラミッドが「BtoC」だとすると、これは「BtoB」の考えのもと新設したものです。今までは「BtoC」中心でやってきたのですが、社員同士で観戦したい、接待に使いたいといった企業の方々が野球を通してコミュニケーションを育んでもらって仕事を上手く進めてもらうというような目的の試合観戦は「BtoC」とは多少違ったりするので、そういう企業さんが求めるものを提供することが課題の1つでした。ーーそのような横浜スタジアムのビジョンと「勝利」との関係性はいかがでしょうか?本業はプロ野球なので勝利には当然こだわるのですが、それ以外でのポテンシャルを秘めたスタジアムの活用法も多いと思います。球場と一体経営している今、新しいビジネスをつくる。そしてお客様によろこんでもらう、場合によっては対象は横浜市民の皆さんかもしれません。さらには市民じゃなくて海外からの観光客かもしれない。つまり、色んな方たちにうまく使ってもらえると、球団・球場の経営としては新しいことができていけるし、それによって前に進んでいけると思っています。10©YDB©YDB


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