SANNO SPORTS MANAGEMENT 2008年 Vol.1

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2008年 Vol.1 FEATURE「ビーチバレー」


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プロリーグ発足のルーツJリーグが開幕したのが1993年であり、今シーズンで17シーズン目を迎えることとなる。その間、平均の観客動員数、プロチーム数、プロ選手数、マーケット規模等、すべての面で順調に増加してきているといえる。また、ワールドカップを韓国と共に開催し、アジアで初のこの大会も大成功に終わった。わずか20年足らずの間にこれだけの発展を見せたプロリーグは、世界を観てもほとんど例がない。Jリーグがヨーロッパや南米の歴史と伝統のあるプロサッカーリーグと大きく違う点は、自然発生的に生じたものではなく、プロリーグという箱が創られてから、その中身を密にそして質の高いモノにしなければならないという点だ。ワールドカップ開催・出場の為、国のサッカーのレベルを向上させ世界と戦えるようになるためのプロ化であり、ある意味、手段の一つとしてプロ化がなされた。Jリーグができ、選手のメンタリティーや環境が大きく変わったことで代表チームも強くなったし、ワールドカップにも常連出場国となることができたことは誰も否定しない。しかし、それが為に抱える問題も少なくない。プロサッカークラブの3大収入源プロサッカークラブの収入源は世界を見渡しても共通していて、<入場料収入><スポンサー収入><テレビ放映権料>の3つが大きな柱となる。その他、グッズ売り上げ等も入ってくるが、経営を左右する要素はこの3つだといえる。ヨーロッパの場合、イングランドやイタリア・スペインリーグでは、テレビの放映権料が収入の4~5割を占め、最も大きな要素となっているのが特徴といえる。しかし、経営をしっかりと安定させているのは、入場料収入が安定していることであり、このあたりはイングランドやドイツが群を抜いている。一方の日本では、テレビの放映権料はJリーグが一括で管理し、各クラブへ分配する方法がとられているが、クラブの収入の10%にも満たない額であり、大きな柱は入場料収入とスポンサー収入であるといえる。日本プロサッカーが抱える問題現存する他のJリーグクラブも、スポンサー収入が半分以上を占めるクラブが数多くある。この状態が不健全であるという理由は、スポンサーという以上、広告価値を目当てに広告宣伝費としてスポンサー料を出費するわけであるが、一方で出費に見合った広告価値があるかというところでは効果が見えづらく評価が難しい。企業側としては、経営が傾いたときに一番最初に削除されるコストであり、景気の悪化や経営状況の悪化により、スポンサー料が払えなくなる企業が出てくるだけで、一気にクラブ経営も悪化し、傾いてしまうという構造なのだ。入場料収入も、クラブが自立するには、まだまだ足りていない。ピッチ上で行われる試合がいくらお金を払ってでも観たい質をもっていれば、自然とお客さんも集まり、入場料収入も上がっていくのだろうが、今のJリーグはまだまだそのレベルにはない。集客するためにチケットをばらまき、それでもスタジアムを埋めることに苦労している現状があり、チケットを額面通りに販売しているクラブといえば、浦和レッズぐらいではないだろうか。試合の質がすべて今、Jリーグクラブがマネジメントをしていく上で抱えている問題と環境はこれらの部分にある。その中で、様々な策を考え実践し、少しでも入場料収入とスポンサー料を上げていく努力がなされている。しかし、プロサッカーの本質を考えれば、試合(選手)の質を上げることが何よりもの収入源となることはヨーロッパのプロサッカーが証明してくれている。ピッチ上の試合や選手達のクオリティーを下げるような、またはネガティブに働くような事を決してしてはならないということだ。日本サッカーが世界に肩を並べるというには、まだまだ早く、やるべき事はたくさんある。西野努産業能率大学客員教授日本のプロサッカー界におけるマネジメントの課題0718


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