SANNO SPORTS MANAGEMENT 2008年 Vol.1

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2008年 Vol.1 FEATURE「ビーチバレー」


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【視聴後満足型】類型5は、期待度を満足度が上回った選手が該当する。テレビ観戦者が、視聴して良かったと評価した選手たちである。しかし、谷本歩実選手、冨田洋之選手、塚田真希選手は、前回アテネ大会の金メダリストである。そうであるにも関わらず、認知度や期待度が類型4ほどは高くなかった。この点は、選手マネジメント上の重要な課題を提示している。それは、オリンピックでいかに輝かしい成績を残したとしても、注目度が長続きするとは限らないことへの警鐘である。類型1・2と比較すれば、確かに落胆のリスクは少ないものの、常時の広告(タレント)価値は下がるのである。アマチュア精神と商業主義がせめぎ合うオリンピックにとって、当該問題は今後さらに大きな争点の一つとなるに違いない。【視聴後感動型】類型6は、北京オリンピックでの活躍により、多くの人々に視聴され、好成績によって高い満足度を獲得した選手が該当する。この類型には全員で74選手が含まれるが、金メダリスト18名、銀メダリスト6名、銅メダリスト10名であり、5位までの入賞選手が全体の93.2%を占める。このことから、スポーツ選手の好感度と成績とは、高い正の相関関係にあることは間違いない。現在ではにわかに信じがたいことだが、彼らの多くが大会前、一般的にはほとんど名前すら知られていなかったわけである。これほどまでの爆発的な“普及”は、他分野でもなかなか類を見ない。選手マネジメントのみならず、誘致合戦なども含めた、ビジネスチャンスとしてのオリンピックの影響力の強大さを示す、一つの重要な事例という見方もできよう。観戦嗜好別マネジメントの必要性趣味嗜好が多様化している現代では、上述のようなマス・マーケティング的な視点だけではなく、市場細分化を踏まえた視点が不可欠となってくる。この問題意識から、当該調査では回答者側のスポーツに関するライフスタイルについても調査を実施している。予備解析の時点でまず明らかとなったのは、男女間における決定的な差異であった。当該調査項目は全部で70項目あるが、そのうち60もの項目において有意水準10%に該当する結果が示されたからである。したがってスポーツ嗜好には明確に性差があり、性別でデータを分けることが妥当と考えられた。男女それぞれにおいて因子分析を進め、主要15項目に絞った解析結果が、表2および表3である。男性のスポーツ観戦嗜好における「知識獲得」と「感情移入」の対立男性では第3因子として抽出される「自身運動」という点を除き、スポーツ観戦項目に注視すると、第1因子「知識獲得」と第2因子「感情移入」との間の対立構造が現れる。対立軸を成す2因子のどちらか一方だけに強く反応する回答者を抽出して相対比較を行ったところ、知識獲得型男性は一般的には認知度が低い選手についてもよく知っている半面、全般的に満足度評価が辛口である。また感情移入型男性では、女子の有名選手に対する期待度が大きく、結果が伴わずとも大きく落胆しないという傾向が見られた。女性のスポーツ観戦嗜好における「報道的視聴」と「娯楽的視聴」の対立他方女性では、第1因子として抽出されるスポーツ中継全般に対する肯定的因子を除くと、第2因子「報道的視聴」と第3因子「娯楽的視聴」との対立構造が浮かび上がる。男性同様に相対比較を行うと、報道的視聴型女性は知識獲得型男性と類似する部分もあるが、当該男性よりも柔軟に視聴対象をスイッチできるという点が明らかになった。また娯楽的視聴型女性は、バラエティ番組に出演経験のある選手に対する認知度・期待度が高く、競技種目としては、バレーボールやビーチバレーに関して視聴度が高いことなどが確認された。以上の分析により、オリンピックを機にスポーツ選手への好感度が変化すること、また観戦者の嗜好の違いにより差異が生まれる事実が実証された。ただしこの結果は2008年8月に開催された北京オリンピックに限定されるものである。成果の一般性を高め、モデルをより精緻化していくためにも、2010年冬季バンクーバー大会、2012年夏季ロンドン大会へと続く今後のオリンピック大会においても、同様の調査および分析を実施し、事例蓄積に努めていかなくてはならないと考えている。評価類型5評価類型6回答項目知識獲得感情移入自身運動国内選手に詳しいルールに詳しい外国選手に詳しいネット記事をよく読むBS/CSでも観戦.787.689.673.557.511.144.150.024.250.179.196.199.162.157.141カムバック選手応援弱気な選手に共感庶民的な選手が好き年配選手応援地元選手応援.198.080.084.168.110.687.647.642.638.557.122.126.099.099.128友人と運動運動することが好き家族と運動する健康目的で運動現在運動サークルに所属.171.152.157.095.211.133.145.140.119.031.771.733.607.454.369主因子法バリマックス回転(累積寄与率54.7%)回答項目愛好的視聴報道的視聴娯楽的視聴ネット記事をよく読む一人でもテレビ観戦家族と話題にする友人と話題にする夢をもらう選手あり.758.739.674.654.391.099.160.147.050.223.062.061.127.179.351実況は事実重視純粋な中継求むゲストは専門家で派手なパフォーマンスは不可プライベートの報道は不可.201.118.168.036.004.682.654.503.487.410.187.063-.104-.051-.024外見の良い選手が好きタレントゲスト歓迎ショー的な要素を求む選手のファッションにも注目選手名はニックネームで.054.018.000.194.212.045-.099-.038.003.056.560.544.464.434.416主因子法バリマックス回転(累積寄与率48.4%)表2:スポーツ嗜好の因子分析(男性)表3:スポーツ嗜好の因子分析(女性)06北京オリンピック日本代表選手の好感度分析17


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