SANNO SPORTS MANAGEMENT 2008年 Vol.1

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2008年 Vol.1 FEATURE「ビーチバレー」


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ビーチバレーがもつ3つの魅力ビーチバレーの持つ魅力は、下図に示した3つの要素にまとめられる。まず、それらの魅力について述べていく。「オリンピック種目」としての魅力オリンピックの正式種目とは、数あるスポーツ競技の中で、世界的にその正統性を認められた一握りの競技種目のみが該当する。それゆえにオリンピックは、国民的な関心が極めて高く、企業などのスポンサーも付き易く、選手たちの練習環境や生活環境も厚遇されることになる。オリンピックで活躍し、さらにメダルを獲得した選手や競技種目の社会に与える影響は大きく、広告塔としての効果は絶大となる。そして、オリンピックで活躍できる可能性は確率的にいって、バレーボールよりもビーチバレーの方が高いと思われる。その理由を端的にいえば、バレーボールで金メダルを獲得するためには、世界一の選手を6人集めなければならないが、2人制のビーチバレーは、2人集めれば世界一になれるからである。「エンターテイメント」としての魅力オリンピック種目の中で、最初にチケットが完売するのがビーチバレーだというのは世界的には常識のようである。そしてこの点は、エンターテイメントとしての魅力の大きさとも関連している。先述の浅尾美和選手や菅山かおる選手の人気もこの側面が強く働いていると思われるが、水着を着て行う、躍動感溢れる華やかなスポーツがビーチバレーであり、本場アメリカではファッションモデルなどを兼業している選手も多く、歴史的にも美人コンテストと同時に開催されてきた経緯を持っている。そしてさらに、次のようなビーチバレーのエンターテイメント性を象徴するエピソードがある。それは、2000年のシドニーオリンピックで4位に入賞した、元女子バレーボール日本代表の佐伯美香選手が、試合当日が偶然にも彼女の誕生日だったことから、オリンピック会場で何万人もの大観衆からバースデーソングの大合唱で迎えられたという出来事である。他のオリンピック競技で、このように大々的に一人の競技者の誕生日を祝うような場面がかつてあったであろうか。ビーチバレーはDJが入って音楽を鳴らし、観客にウェーブさせるなど、どの競技種目にも負けないくらいの、高いエンターテイメント性を持っているスポーツである。「レクリエーション」としての魅力最後にビーチバレーは、なんといっても自由なスポーツである。バレーボールであれば、体育館を予約して、最低12人集めなければ試合ができないが、ビーチバレーならば、自分ともう一人友達がいればすぐチームができ、4人集まればゲームを行うことができる。さらに、何よりも開放的である。太陽の下でシューズも履かず、男性であればそれこそ短パン一枚でプレーが可能となる。そういう意味で、誰でも気軽に、思い立ったらすぐにでもできるような自由さが、ビーチバレーには備わっている。3要素の相互矛盾とその解決策以上のように、ビーチバレーがもつ3要素を個別に取り上げれば、どれも十分な魅力を備えている。しかし、左の図における①②③のように、相互には無視できない対立関係がある。今後、日本においてビーチバレーがより発展していくためには、それらの対立要素を、固有の良さを損なわずに、いかに解決していけるかが課題となるであろう。本稿の後半では、その対立要素を整理し、日本ビーチバレー連盟の委員の一人として、川合俊一会長や瀬戸山正二理事長らと共に現在進めている、いくつかの施策について紹介したい。「オリンピック種目」×「エンターテイメント」の課題オリンピック種目に認定される栄誉は、スポーツ競技として極めて重要な部分である。しかし“正式種目”となった瞬間、勝つことに最も重きが置かれ、ルールが厳格化し、商業主義への歯止めもかけられる。すでにユニフォームの規格が定められ、個性が制限されてきたことは否定できない事実である。その流れからすると、ビーチバレー特有の良さである上記DJの例などのエンターテイメント性も今後規制が強化されてくる懸念がある。このような正統性とショー的要素とのバランスを、いかに取っていくかが一つ目の課題である。1オリンピック種目レクリエーションエンターテイメント231FEATURE「ビーチバレー」Let'splayBeachVolleyball!6


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