SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8 FEATURE「スポーツを通じた社会貢献」


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FEATURE「スポーツを通じた社会貢献」そういう時に柔軟な発想であったりとか、いろんなアイデアが出てくる人というのは、やはりスポーツ以外にもいろんな趣味を持っている。これからのスポーツ業界に必要なのは、そういう色々な知識を持ち込めることだと思いますし、それが願望でもあります。——「柔軟性ですか。そしてスポーツ界のことはあとから色々と学べるものなのですね。」情熱があればあとからでも十分学べる情熱があればあとからいくらでも対応できます。若いうちにできる色々な経験、大学の中でもサッカーだけではなく、野球やバスケットボールの観戦に行ったりとか、他のスポーツを観たり、世の中で売れているものがあれば、何で売れているんだろうって勉強したり。そういうことを今になって私もやっていますので、せっかくなので若い頃に沢山経験をした方が、スポーツ界に入ってから人とは違う特長を持って仕事ができることになると思います。——「ビー・コルセアーズ様、よろしくお願い致します。」お客様が楽しめることを幅広く理解すること坂本さんのおっしゃる通りだなと思います。本当にスポーツ以外のものを持っているということが後々に大切になってくるのはないかと思います。勝負のみではなく、お客様が楽しめて、仮に負けたとしてもお金を払った分の元は取れたと思って頂けるものがある。何があったら喜んでくれるのかを理解することが大切。たとえば、ディズニーランド行ったらこうだったとか、あの舞台はこうだとか、そういった部分を見て経験して、そして今後自分が行きたいスポーツの団体にどう置き換えたら、どうすればいいんだろうと考えるようにする。そういった人であって欲しい。好きであれば気力も体力も続くと思います。あとは指示待ちではなく、自分で「こうしたい」と思うことがすごく大事なことだと思う。——「主体性や自主性といったことも大切なのですね。」固定概念にとらわれない柔軟な発想今までの固定概念にとらわれないということ。バスケットボールはこうあるべきとかではなく、多面的に見ることができるようになるのは大切だと思います。「こういう風にやっても良いのじゃないか」とか、極端な話し、「バスケットボールって別に体育館でやる必要ないじゃないか」。そういう固定概念がなく考えられることを経験として持っていると強みになるのではないかと思います。——「ベイスターズ様、いかがでしょうか?」次の野球我々が大事にしていることというのは、一言でいうとアイデアです。入社した全職員に配っている『次の野球』という本があります。これは、既成概念とかルールをまず無視して、「野球には、こういう可能性があるのではないか、こんな野球があっても面白いのではないか」というアイデアを職員、選手、監督、コーチから集めてまとめた本です。アイデアを集めたところ、大体600くらい集まりました。そのアイデアを分類して、140くらいにまとめてイラストをつけて本にしたのですが、これがベイスターズの礎のアイデンティティに近いものになっていて、一般にも販売しました。ファンの目線でアイデアを創らなければならない。そのためには、皆さんおっしゃっていたように野球だけじゃなくていろんな目線が大事だと思いますし、エンターテイメントに触れなければいけないと思いますね。人材の流動性の大切さまた野球界は、もっと人材の流動性があってもいいのではないかと思います。さっきの経営の問題につながるのですが、人材の流動性がないと、業界が活性化しません。プロ野球というトップスポーツビジネスに、もっと他業種からどんどん優れた人材が入ってくれば、もっともっとプロ野球文化自体が発展するのではないかと思っています。同じスポーツであるサッカーやバスケットボールとも、どんどんビジネス面での人材の交流が生まれて、業界が活性化するといいですよね。——「では最後に、今日を振り返って一言お願い致します。」坂本氏共感できるところが多かったです。サッカーだけではなく、スポーツにお金を使うという文化は、アメリカやヨーロッパに比べるとまだまだ無いですし、いろんなスポーツをスタジアムで観るという文化にするためにはまだまだやることがいっぱいあるなとすごく思いました。われわれは親会社がないチームですので、その中で、逆にないからこそ自由に色々なことができるということがあって、我々は自分達の発想で新しいものを生み出せているのかなと思いました。植田氏とても勉強になりました。スポーツのジャンルは違えど、抱えている問題ややり方は似ています。我々は親会社をもたないクラブチームで何とかここまでやってこられたと思いますが、やり方としては間違いではなかったのだと改めて感じました。『次の野球』を読みましたが、この「次の」という部分こそ、私達が考えていかなければならない展開なのかと考えています。楠本氏お話ができてとても勉強になりました。みんな考えていることが似ているなと。坂本さんがおっしゃったようにサッカーに興味が無くてもスポーツを楽しめる総合型地域スポーツクラブという考え方とか、植田さんがおっしゃっていたバスケットボールだけじゃなくて、“健康”というワードに広げて活動するとか。プロスポーツが街に還元できることというのは、競技を超えて何かやれることがあるのではないかと感じました。そういう意味では、また何かご一緒して連携してできればいいなと思います。——「本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。」座談会を終えてスポーツマネジメント研究所所長中川直樹かつてプロスポーツは、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等を中心に報じられ、メディアの中にある高嶺の花的存在であったが、様々な関係者の尽力によって、そうした夢世界が今では生活の中のリアリティとして存在感を示すようになってきている。例えば、試合を行っている選手達に近い場所での試合観戦、頻繁に行われる握手会やサイン会、練習場の公開、選手個人としてのSNSによる情報発信などのファンサービスもまた、プロスポーツをよりリアリティに近づける後押しをしていると言って良いだろう。では、プロスポーツチームが行ってきた社会・地域貢献についてはどうであろうか。プロスポーツチームも他業界と同様にCSR(企業の社会的責任)を謳い、これまでにスポーツ普及活動や寄付、施設訪問等、公共活動を中心とした様々な支援を続けてきた。しかし、これらの支援が社会や地域が直面する課題にまで直接踏み込んだ活動であったかは評価が分かれるところである。今後にプロスポーツがリアリティとして日常生活の中に溶け込んでいく過程の中で、求められる社会・地域貢献もまたリアリティさを増すことは、必然の流れなのであろう。今回、3社との対談の中で皆様が頻繁に口にされた、「近さ」という言葉が、プロスポーツチームにおけるこれからの社会・地域貢献のあり方を物語っているように受け止められた。8


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