SANNO SPORTS MANAGEMENT 2014年 Vol.7

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2014年 Vol.7 FEATURE「歩みの先へ」


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06大学とプロスポーツチームのスポーツ連携-産業能率大学collaborationwith湘南ベルマーレ・スポーツ教室における新プログラム導入の効果と課題-情報マネジメント学部教授中川直樹/情報マネジメント学部教授渡邉隆嗣産業能率大学collaborationwith湘南ベルマーレスポーツ教室は、NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブにて取り組んでいる種目中心として、毎月1回、年間で11回開催されている。これまでの参加者は、湘南ベルマーレや競技団体等からの勧誘を受けたチームの小学生が大半を占め、個人参加者は少なかった。スポーツの普及および振興を目指すためには、個人参加者、特に初心者へスポーツ参加の機会を提供することは極めて重要であると考えられる。そこで、2014年度に初心者を対象としたプログラム導入を試みたので、本稿ではその効果と今後の課題について報告する。大学とプロスポーツチームの連携によるスポーツ教室「産業能率大学collaborationwith湘南ベルマーレスポーツ教室」(以下、スポーツ教室と略す)は、本学の持つスポーツ施設と湘南ベルマーレの有する指導者や指導ノウハウを活用して、伊勢原市や平塚市を中心とした地域のスポーツ振興に貢献する目的で2008年から開始された。スポーツ教室は立ち上げから順調に回数を重ね、2013年度には参加者の合計が500名を超える規模となった。そしてこの6年の間に、スポーツ教室参加者アンケートや伊勢原市スポーツ環境調査1)により参加者のスポーツ教室に対するニーズに関するデータを蓄積することができた。そこで、2014年度のスポーツ教室を開講するにあたり、参加者のニーズを分析し企画したプログラムが、初心者を主対象とした月1回、4回シリーズで開催する「初心者サッカークリニック」である。そしてこのクリニックでは、サッカーのプレイを楽しむ基礎となる「ドリブル」、「パス」、「シュート」および「ゲームテクニック」を各回のテーマとして掲げて開催した。本稿では、4回シリーズのクリニックへ初めて子どもが参加した日に保護者向けに実施したアンケート(以下参加者アンケートと記す)とおよび最終回に2回以上参加した子どもの保護者向けに実施したアンケート(以下最終回アンケートと記す)の集計結果について報告を行う。新プログラム導入の効果初心者の参加が増加2013年度までのサッカー(フットサルを含む)教室では、対象を小学生としその技術レベルは特に限定していなかった。しかし参加者は、すでにサッカークラブ(チーム)に所属している子ども達が大半を占めており、日頃からトレーニングを継続していている子ども達が多かった。そこで新プログラムとして、「初心者サッカークリニック」と謳って参加者を募ったところ、「サッカークリニック(教室)に初参加」と回答した参加者が全体の32%(19名)となった。また、参加が2回目までの子ども達を含めると全体の56%(33名)、3回目までを含めると64%(38名)となり、以前のサッカー教室とは異なり参加者は募集対象とした初心者が中心となった(図1)。さらに、その参加者のうち53%(10名)が、運動部やスポーツクラブへの加入率が最も高いと報告されている9歳より幼い子ども達であった2)(図2)。13その他35.6%3回目8.5%11歳5.1%10歳11.9%9歳16.9%8歳20.3%2回目23.7%図1.過去のサッカークリニック(教室)への参加回数初めて32.2%6歳18.6%7歳27.1%図2.参加者の年齢なぜ9歳未満の初心者の子ども達の参加が多くなったかを推察すると、運動部やスポーツクラブへの入部を検討するための体験として捉えていることが1つの理由として考えられた。しかし、最終回アンケートにて2回以上参加した子ども(30名)の行動や考え方の変化を保護者に質問したところ、「サッカーチームへの入部を検討し始めた子ども」や「入部を希望する子ども」の人数は、各2名に留まった。一方、参加者アンケートにてサッカークリニックで実施して欲しいプログラムについて質問すると、「週1回や月1回開催で通年参加できるプログラムを希望する」が38名中14名、「個人で参加できるプログラムを希望する」が15名から挙がった(図3)。したがって、今回参加した初心者は、サッカーを続けるとしてもチームやクラブのように高頻度で参加する形態ではなく、習い事のように週1回や月1回の頻度での参加を希望していたことが窺えた。


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