SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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06本学と台湾銘傳大学の学生による台湾プロ野球観戦者向けイベントの開催情報マネジメント学部教授中川直樹じみのある場所であったし、事実インバウンドとして球場へと足を運ぶファンも多かった。同様に千葉ロッテマリーンズも2019年の3月にホームであるZOZOマリンスタジアムで、ラミゴモンキーズと交流試合を開催し、台湾からのファンを集めていた。PLM代表取締役CEOの根岸友喜氏は、「台湾のファンに、日本の球場で感じた経験、体験、文化などを台湾に持ち帰ってもらい、生活の中に野球がより根付いていくための貢献をしていきたい」語った1)。これはどちらかと言えば受容的である日本のグローバル化に対し、スポーツを通じて日本の生活文化に関する情報を発信する1つの行動であり、相互の理解を促進させる事例となると筆者は捉えている。しかしながら、スポーツを通じた教育、文化等における交流を行うという意味では、FOXスポーツ台湾アナウンサーが行った試みなど、日本でも参考にすべき点がまだまだ残されている。日本と台湾における野球交流これまで、日本プロ野球(NPB)においては多くの台湾出身の選手が活躍し、2019年シーズンにおいても陽岱鋼選手をはじめとする10名の選手が在籍している。2019年に台湾プロ野球(CPBL)の1チームであるラミゴモンキーズから日本プロ野球(NPB)の日本ハムファイターズへ、王柏融(ワンボーロン)選手が入団した。王選手は25歳ながら、入団2年目(2016年)から打率4割、200安打を記録、さらに2017年は4割に加え三冠王(打率、本塁打、打点)となりCPBLでは「大王」という異名を持つスーパースターである。王選手が注目されるのは、選手としての魅力はもちろんのことであるが、台湾球界から初めて「ポスティング制度(海外FA権を取得していない選手の海外移籍を可能とする制度)」を利用してNPBに移籍したことも理由の1つである。CPBLは1990年に開幕を迎えたが、その後に幾度かの八百長問題等の不祥事が発生したことからリーグへの信用が失墜し、台湾のアマチュア選手はCPBLへは行かずにNPBを目指す選手が多くなった。また、ヤンキースで19勝した王建民投手のように、MLBを目指す選手も増えてきている。いずれにせよ、ポスティング制度で移籍した王選手が日本ハムで活躍することは、CPBLの実力と健全さの証明に繋がるものと期待されている。2018年12月から3月まで台湾プロ野球30周年特別展が開催された(台北市華山1914文創園区にて)NPBは、特にパシフィックリーグ(以下、パ・リーグ)を中心として、ファンマーケットを開拓する1つの手段として、CPBLとの連携を構築してきた。現在NPBに在籍する台湾選手10名のうち8名はパ・リーグのチームに所属しており、台湾の野球ファンにとってパ・リーグは身近に感じられる存在であろう。そして、パシフィックリーグマーケティング株式会社(以下、PLM)と台湾のスポーツ専門局であるFOXスポーツ台湾との間で、2019年シーズンから3年間台湾におけるパ・リーグ主催試合の放送契約の締結(1週間に10試合以上、年間では300試合以上の中継)が発表され、さらなる台湾ファンの拡大を目指している。FOXスポーツ台湾の許乃仁アナウンサーは、実況にあたっては、野球に関することだけでなく、日本の文化や習慣、さらには祝日など日本の様々な事柄を紹介し、台湾のファンに対して、NPBや日本文化をより身近に感じてもらえるよう努力していると語っている1)。こうした試みもあってか、陽岱鋼選手がまだ日本ハムに在籍していた当初は、台湾ファンにとって「北海道」や「札幌」はな16台湾流の応援が繰り広げられた交流戦(2019.3.14ZOZOマリンスタジアム)日本からのスポーツマーケティングに関する知見の発信ラミゴモンキーズの応援の代名詞といえば、ベンチ上の舞台で華やかなダンスを中心に観客を盛り上げる「LamiGirls(ラミガールズ)」であるが、この応援形態は韓国プロ野球チームの模倣なのだということを球団関係者から聞いた。特にラミゴモンキーズでは広い視野で独自の野球文化を確立しようと、ファン獲得のために観戦応援を盛り上げる手法を積極的に試行錯誤している。例えば、2019年5月のラミゴモンキーズ公式戦開催時に行われたイベントである、日本フェスタ「YOKOSO桃猿」においては、日本ではおなじみではあるが、まだ台湾ではそれほど行われていない7回表終了時の「ジェット風船発射」をPLMの協力のもと再現している。FOXネットワークグループアジア副総裁兼中華圏(台湾・中国)最高業務責任者の蔡秋安氏は、PLMとの間では今後も様々な展開が可能だとし、具体的な例として、日本プロ野球を通じたスポーツマーケティング教育を挙げている。蔡氏は、大学でワークショップを開催して野球解説者を招いたり、試合中継を利用して、より多くの台湾の若者が、スポーツマーケティングのほか、エンターテインメントやレクリエーションについて学べたりする場を作っていく構想を明かした1)。本研究所でもプロスポーツ(野球、サッカー)の黎明期を迎えた台湾において、日本プロ


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