SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2018年 Vol.11 VICTORY「勝利」


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05湘南ベルマーレルヴァンカップ初優勝情報マネジメント学部教授西野努2018年10月27日埼玉スタジアム2○○2にて、湘南ベルマーレは横浜Fマリノスを下し、ルヴァンカップ初優勝を遂げた。ルヴァンカップ(2016年まではヤマザキナビスコカップ)は、クラブが成長スパイラルに入る大きなきっかけとなるタイトルである。湘南ベルマーレがこのタイトル獲得に至るまでの経緯を、この大会の特徴と歴史とともに振り返りたい。〜大会フォーマットとコンセプト〜若手の育成JリーグYBCルヴァンカップという大会のルーツからその位置づけについて振り返ってみる。第一回は、1992年秋。翌年に開幕するJリーグの前哨戦的な位置づけでスタートした。日本におけるプロサッカーのスタートとなる大会であり、1993年からの盛り上がりを十分に予想させる人気と評判の大会となって始まった。大会の開催時期が、所謂、インターナショナルマッチデー(国際的に、代表チームの試合が開催される期間として定められる日)等に当たるため、各チームの主力選手となる日本代表選手の出場が期待できないことが多い。また、主力となる代表選手が不在であることから、各チームにとっては、リーグ戦で出場機会のない若手を含む選手達を起用する機会となる。こうしたことから、1996年からは”ニューヒーロー賞”という満21歳以下の選手対象の賞が設定され、活躍する若手選手にチャンスを与える大会という位置づけと見なされるようになった。大会ルールについても、プロの興業として、またスポンサーの立場も考え、ベストメンバー規定というものが設定され、所謂セカンドチームで戦うことを防ぐルールも設定された経緯はあるが、基本的なコンセプトは変わらないといえる。2017年からは、新たにU21枠を設定し、スタメンに必ず21歳以下の選手を含めることを義務づけている。大会側、スポンサー側の意図がこのルール変更からも伺うことができる。別表は、Jリーグが発足したのちの、国内プロサッカーのタイトル獲得クラブ一覧であるが、リーグカップ戦は、各クラブにとって初タイトル獲得の機会となっていることが多い。そして、このタイトル獲得を契機にその後数々のリーグタイトルや天皇杯を獲得する流れとなるクラブが多数見られる。潜在的に力のあるクラブがタイトルを獲得してその後飛躍するきっかけこのリーグカップ戦(JリーグYBCルヴァンカップ)は、プロサッカー界において上のような位置づけとなる。攻撃的なサッカー”湘南スタイル”の萌芽〜曺貴裁監督の就任〜「サッカーの原則(90分たって、一つでも相手のゴールにたくさ「選手は練習や試合を通じて、成長したいし、サッカーを楽しみた「勝つための戦術や方程式はない。勝つ可能性を高めるプレーを攻撃サッカーのルーツは、1990年代のベルマーレ平塚時代からあったが、スタイルとなってチームとクラブ浸透し始めそれが加速したのは、曺貴裁氏の監督就任後ではないだろうか。んボールを入れれば勝ち)」増やすだけ」い。」等曺監督から発せられた言葉から、チームコンセプトが浮かび上がってくる。若い選手、他クラブで出番を失った潜在能力を発揮仕切れていない選手の成長ボタンを押す事に長けている曺監督は、個を伸ばし、存分にその才能を引き出し、チームのために発揮させ、そのチーム自体をパフォーマンスさせる事をこの湘南ベルマーレで実現させている。チーム人件費(クラブ年間売上も)がJ1の中では最低レベルにありながらも、J1に残留し、カップ戦でタイトルを獲得することで、またそのマネジメント能力の高さに一つの証拠が付与されることになった。カップ戦、特に決勝トーナメントは、チームの勢いが優勝するチームには必要だが、その勢いがそのまま結実した事例と振り返ることができる。〜クラブ経営のさらなるプロフェッショナル化〜2018年春は、衝撃的なニュースから湘南ベルマーレは始まった。株式会社ライザップによる連結子会社化。毎年のように主力となる選手が移籍で出ていく現状を打破するために、また、安定して地域のためになるクラブ作りをするために、この経営統合は実現したといえる。上場企業であるライザップによる子会社化は、クラブ経営に様々な14


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