アニュアルレポート

地域創生・産学連携研究所は、経営学を主体とした地域創生に資する活動を展開します。 持続可能な社会を形成するうえで、地域社会の発展は不可欠です。そのアプローチには経営学、ICT活用、マーケティング戦略は特に重要な分野といえます。 当研究所では、キャンパスのある自由が丘や湘南をモデルに地域創生の成功モデルを構築し、日本社会での地域創生に貢献します。


>> P.33

北見工業大学と美幌町がこのほど包括連携協定を結んだ。中心市街地の再開発や滞在型観光への転換などに取り組む。同大と自治体との協定は北見市に次いで2例目。大学に町の「知恵袋」になってもらおうと、同大OBの平野浩司町長が要請した。協定では地域とまちづくりの推進、学術振興、教育人材の育成、産業・観光振興など地域経済の発展などを掲げる。これらを進めるため隔月で会議を開く。衰退する中心市街地に必要な機能の分析や宿泊施設の誘致などについて、大学生も加わって協議する。観光地の美幌峠と町中心部を結ぶ国道243号沿いの温泉施設の観光振興も議論される。北見工大の鈴木聡一郎学長は「研究成果を課題解決に役立てる地域貢献も大学の使命。地域を発展させたい」。平野町長は「大学の知恵やアイデアをいただき、官学一体となった町づくりを進めたい」と期待を込めた。出所:2021年12月21日朝日新聞朝刊(北海道版)平野浩司町長の「町の知恵袋」という言葉は、大学に対する自治体(特に町村)の期待を端的に表すものとして興味深い。2.大学と自治体の地域連携活動の課題総合研究所は全国の自治体で長年にわたって、自治体職員の人材育成・能力開発を行ってきた。筆者も1990年代からさまざまな自治体研修の企画・プログラム開発に携わり、研修現場で研修運営支援を行ってきた。この人材育成経験から高い専門性と知見を持つ大学と一緒に活動していく自治体職員について、その知識・スキル面から考えてみたい。(1)課題の設定力ある自治体では「教育、文化、健康、福祉、スポーツなどの分野で協力し地域の活性化を図る」を連携目的としている。ここから多種多様な問題に直面して悩んでいることが分かる。ここで「知恵袋」の力を借りて全てに取り組みたいところであるが、費用・時間などの制約時間があるのでこれは難しい。これまでのようにKKO(勘と経験と思い込み)で決めるのではなく、重要性・公共性・緊急性・影響度などの選定基準を決め、問題を評価・選択して取り組むべき課題を設定していきたい。ここに職員のロジカルな課題設定力が求められるのである。(2)目標の設定力連携目的には「推進、振興、活用、活性、協力」などの単語が多いが、これらは曖昧ワードとなってしまう。連携して解決する課題が決まれば、その課題を「目的(めざす方向)」「目標(達成レベル)」を明確にすることが必要となる。例えば「市民の学び」を課題としたのであれば、その目標を「何を」「いつまでに」「どのレベルまで」と具体的・定量的に記述して大学側と共有する。これにより「知恵袋」である大学も目指すべきゴールが認識し、どのような知恵と力を出せばよいかがわかり、そこから新しい施策・事業が起きてくるはずである。また目標が定量化されれば、施策・事業の評価も客観的に行うことが可能となる。(3)企業活動の基本知識自治体でのある研修において、講師が「QCD(品質・コスト・納期)」という言葉を知っている人は?」と質問をしたが手を上げた職員はわずかであった。QCDという言葉を行政現場で使うことはほとんどないから当然なことと思うが、これから大学や企業と連携する場合は基本的な企業活動の基本知識(マネジメント・財務・マーケティング他)は持っておきたい。大学・企業のビジネスの進め方を体験することは自治体職員にも得るものが多いはずである。まとめ筆者は自治体向け研修プログラム集を毎年編集しているが、その冒頭に「自治体職員は前例や従来の枠組みにとらわれない柔軟な思考を持ち、『自分たちが危機的状況を打ち破る』という使命を感じて、政策形成能力・マネジメント能力・業務遂行能力を高めていってほしい」と書いている。この地域連携活動が自治体職員の思考の枠組みを大きく広げ、新たな行政施策が数多く創出されることを期待している。31


<< | < | > | >>