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リレーエッセイ 2021.09

永山 祐輔  (Yusuke Nagayama )
<担当科目>
「心理学実験演習」「アサーション(コミュニケーション技法)」

<趣味、特技>
古書店巡り

<メッセージ>
みなさんは、他者の発信した情報に「いいね!」とリアクションをすることに慣れているかもしれませんが、自分の体験(=努力など)に「いいね!」をつけることはできていますか?学習や趣味などの物事に取り組む中では、他者の存在や自分の中の達成目標との比較によって、自分の能力に自信を無くし、自分に「いいね!」がつけられない場面があるかもしれません。そんなときは、昨日の自分と今日の自分を比べてみてください。「英単語を1つ覚えられた」、「腹筋を1回多くできた」という微分的な変化の積み重ねが、大きな変化を生んでいきます。在学生のみなさんが、本学での学修を通して、自分の小さな変化に最大級の「いいね!」をつけられるように全力でサポートさせていただきたいと思います。

みなさんは「おりがみ」で「鶴」を折れますか?

はじめまして、今年度より自由が丘産能短期大学の専任教員として着任しました永山祐輔(ながやま ゆうすけ)と申します。私は、臨床心理士指定大学院を修了後、公立小学校、児童相談所にて実務経験を積み、昨年度まで産業能率大学湘南キャンパス学生相談室のカウンセラーを5年間務めさせていただきました。

唐突ですが、ここで質問です。みなさんは、「おりがみ」で「鶴」を折れますか?

ご存じの通り「おりがみ」は日本発祥の文化で、今では「origami」という名称で世界中の人にも親しまれています。私自身は手先が不器用なのと、頭の中で空間イメージを操作することがとても苦手なので、「おりがみ」との関わりの中にあまりいい思い出がありません笑

本学に赴任するにあたって、自分の研究テーマを考えた時に「おりがみを折ること=人生?」というイメージが生まれましたので、自己紹介がてら、ここに書いてみたいと思います。

「0から鶴を作る難しさ」

みなさんは、“キラキラと目を輝かせた子ども”や“気になる異性”に「おりがみで“鶴”を作ってほしい♡」と頼まれたら、どうしますか?おそらく「きれいな“鶴”を折ってあげなきゃ!」と考え、おりがみの本を読んだり、“鶴”の折り方を扱った動画を観たり、するのではないでしょうか?そのような方法で既存の「鶴」という作品をある程度の労力で再現できれば、作った自分も作ってもらった相手も双方ハッピーになれることと思います。

では、みなさん!
おりがみで「鶴」を制作する際、おりがみにおける一般的な「鶴」のモデルを捨て、生物としての「鶴」をモデルに、おりがみで「鶴」を制作することができますか?
一般的な「鶴」の折り方を手放し、0からおりがみという“平面”を“立体”に構成していくことはできるでしょうか?

私にはできません!笑
ぜったい途中で投げ出します!

なぜ、自分にできないことをここで話すかと言いますと・・・。
おそらく、この試行錯誤の過程こそが自己表現、体験、学習になるのではないかと考えているからです。

0からおりがみで鶴を作成する場合には、

1. まず生き物としての“鶴”のイメージを形作る
2. つぎにおりがみで再現するためのイメージを作る
3. 実際に紙を折り、鶴の形になるまで、たくさん試行錯誤する
4. なんとなく“鶴”っぽいものができたような気がする
5. 一旦完成にするか、改良を続けるか

などの過程を辿っていくのではないでしょうか?(もうすでに大雑把!笑)

おりがみで、“鶴”を折るという行為を「表現」や「体験」という視点で見た時、既存の“鶴”は誰かが練りに練った中で生まれた表現の1つの形です。私たちは、それがもうどうしようもなく、“鶴”であるために思考停止し、その鶴を再現することに力を注ぎがちですが、実際にはいろんな“鶴”があってもいいですよね!
ドキドキしながら、折ったり、折り返したり、一部破れたり、クシャクシャになった紙で完成させること、そして、作られたものを「これが“鶴”です!」と自信をもって表現することができるかどうか、が大切なポイントなのではないでしょうか?そして、私たちは、そんな表現物を既成のモデルを基に、相対的に、評価的な目で見ることで、自分なりの表現物を“作る”ことを辞めたり、作品の“個性”を否定したりしていないでしょうか?

たくさんの情報が溢れる社会の中「きれいな」、「ちゃんとした」、「成功した」など、キラキラした結果だけに目が向きやすくなってしまいますが、個人的に「表現」、「体験」とは、そのような泥臭さがたくさん詰まった過程を辿り、それぞれが形作っていくものではないかと思っています。そして、残念なことにその過程は「止める」ことはできても、「終わり」はありません。

終わりがない・・・。
自分で書いていて、苦しくなってきました!笑

「自分にとって、「好き」なこと、ものであれば、続けられる?」

そんな過程を走り続ける秘訣は、その対象を「好き」でいることが何より大切だと思います。
今、みなさんが本学で学習している内容においても、「好き」、「興味がある」から取り組まれているものが多いのではないでしょうか?

そういった「好き」なものであれば、試行錯誤の過程も自ら取り組もうとするモチベーションが上がります。そんな過程の中での経験の蓄積は、みなさん自身の中にしか生まれません。そして、その経験を基に、実践、表現するのもみなさん自身です。みなさんが今打ち込んでいること、興味をもって取り組んでいることを肯定し、今の自分が表現できる限りでの「鶴」を折りきってみることを目指してみてはいかがでしょうか?

私自身も、みなさんの制作過程がよりよいものになるように、自らも日々努力を忘れずに、この終わりのない過程の中で、できる限り頑張りたいと思います!