2015年度 報告

2015年度 事業実績および成果

 本年度はスタッツデータの測定を本格化し、前年度に改訂を重ねた「測定シート」および「授業後アンケート調査票」を用いて測定を行った。また、分析手法および結果の活用に関して検討を進め、担当教員にスタッツデータの分析結果を示す「フィードバックシート」および担当教員自身が授業計画と測定結果を比較して授業改善案等を記入する「学習者行動改善シート」を開発した。これにより、授業プログラムや授業進行上の課題を客観的に把握した上で授業改善を図ることができるようになった。

 また、アクティブ・ラーニング(AL)・サポート・ツールの運用を開始し、ツールを活用した授業設計・進行のノウハウの収集およびツール活用上の課題・障害などについて調査を実施した。これにより、ALサポート・ツールの活用によってグループワークの発表等の円滑化を図ることができ、教員からのフィードバックの充実など、学生の深い学びを導く教育の実現につながることがわかった。

 前年度、シラバスを改訂し、事前・事後課題を含む授業外学習の記述を詳細化し、授業外学習の成果を成績評価の対象とすることにしたが、本年度は、授業外学習の成績評価の割合を原則として20%以上にすることを決定し、授業外学習の内容を含むシラバスの記載内容や形式を教員がセルフチェックできるチェックシートを開発し、授業外学習の実質化をさらに推進した。これにより、学生がすべての科目の授業外学習の内容や授業計画を詳細に把握し、学習計画に活かすことができ、学生の授業外学習に対する意識が向上し、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びが促進されるようになった。また、学生の授業外の学習時間、リーディング量、ライティング量の全学的調査の実施に向けて試行を行い、調査手法を検討し、調査票を開発した。これにより、適切な量と質のリーディング・ライティングアサインメントを具体的に検討し、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びを促進する仕組みづくりが進んだ。

 さらに、本年度は学生の授業外学習のサポートを学習支援センターの中心的活動とすることにし、学生ニーズの高い英会話等に関して課外講座を実施し、学生の主体的学びを促進した。また、学習支援機能充実のための施策として、学生が授業外で他の学生や後輩の学習を支援(ピア・サポート)する学生ボランティア「Shares(シェアーズ)」を組織した。Sharesは、学生の視点から、科目における学習のみでは十分に修得することができない計数処理やプレゼンテーションなどに関する講座を企画・開講し、多くの学生に課外での学習の機会を提供した。

 加えて、必修科目の出席状況など、学生の学習行動の把握に寄与するデータを特定し、その収集を行い、収集した学習行動データを用いて、アカデミックアドバイザーが学生と面談を行い、学習計画等の指導を行った。また、学生自身が学習計画等をラーニングポートフォリオに入力し、その進捗を自身で管理し、振り返りを行う体制の整備も進めた。これにより、学生自身が過去の履修状況や学修成果に照らして学習計画を立案し、振り返りを行うことができるようになり、主体的学習者としての習慣を身に付けることが促進された。

 学修成果の多面的把握の推進の観点から、技能・態度到達度調査(PROGテスト)の対象を拡大し、1年生に加えて、2,3年生にも全員受検を義務づけた。これにより、経年での学修成果の把握(パネル調査)が可能となり、本学学生の技能・態度における強み・弱みに沿った授業改善が促進されるようになった。また、学修成果をデータに基づいて可視化できるようになったことで、教員の授業改善に取り組む意欲も高まり、一部の科目では授業プログラムの大幅改編などにつながった。

 本年度は、本学の取組みに興味を持った大学等からの依頼に応じて、取組み内容および成果を講演会・研修会等で発表する機会も得た。

実施計画 事業実績および成果
(1) スタッツデータの測定・分析を行い、分析結果に基づいて教員に対してコンサルテーションを実施する。  前年度、改訂を重ねたスタッツデータ「測定シート」および「授業後アンケート調査票」を用いて、本年度は計34科目・35クラスを対象に本格調査を行った。本年度は、測定作業を効率化し、記入ミスを低減するため、パソコンを用いたスタッツデータの記録を実施した。手書きでの記録からパソコン入力に切り替えたことで、データ化作業が不要となり、作業の効率化を図ることができた。また、必要項目に入力がなかった場合に、注意喚起の表示を出すなどの工夫を施したことにより、データ入力の正確性も向上した。
  また、本年度は、データの分析方法および分析結果の担当教員へのフィードバック方法について検討を深めた。データを大きく教員行動と学習者行動に分け、かつ、Active Learning要素とLecture要素を区別して分析することにした。そして、分析結果を示した担当教員への「フィードバックシート」には、参考データとしてActive Learning型科目とLecture型科目の各指標の平均値を付記することにした。これにより、担当教員は、自身の教授スタイルを他科目と比較し、改善点を発見することが可能になった。また、スタッツデータの測定前に担当教員が授業計画と授業進行上の工夫等を記入し、測定後に測定結果について自己評価を記入する「学習者行動改善シート」を開発した。本シートにより、スタッツデータの分析結果による授業改善がより一層促進されることになった。
  さらに、次年度以降の測定科目数・クラス数の増加を見込んで、研修を通じて測定スタッフの養成・増員を図った。
  計34科目・35クラス分の「フィードバックシート」が担当教員に示されたことにより、授業プログラムや授業進行上の課題を担当教員が客観的に把握することができるようになった。これにより、学生の深い学びを伴った教育の実現に向けて、授業改善のPDCAを加速することができた。
(2) 同一科目を複数教員で担当する場合の教員による教授法に左右されない教材等に関する検証を実施する。  初年次教育等で広く行われている同一科目を複数教員で担当する科目におけるアクティブ・ラーニングの質を担保することは、学生の4年間の学びを深める上で重要である。そこで、これまで科目主務者(科目の担当責任者。授業内容および運営に責任をもち、科目担当者間の連携・情報共有を図る役割も担う)が個々に蓄積していた担当教員の個性を活かしつつ、教育の質を担保する教材や教育プログラム上の工夫を集約して、ノウハウ化する試みを実施した。
  同一科目を複数教員で担当する科目に関して、これまで散在していたノウハウを集約することにより、学生は、担当教員を選択することができないクラス指定科目においても、担当教員の経験や教授スキルによらず、質の高いアクティブ・ラーニング機会を得ることが可能となった。
(3) 大教室におけるAL サポート・ツールを用いた授業設計・進行についてのノウハウを蓄積する。  前年度までに整備したALサポート・ツール(無線対応プレゼン資料集積投影機器、クリッカー)の運用を開始した。ALサポート・ツールを配備した実験教室を使用した専任教員全員にアンケート調査を行い、ツールを活用した授業設計・進行のノウハウを収集し、ツール活用上の課題・障害などについて意見を募った。本調査により、無線対応プレゼン資料集積投影機器は、授業の円滑な進行に大きく寄与することが分かり、次年度より新入生向け推奨パソコンに同機器対応のソフトウェアをプレインストールすることを決定した。
  ALサポート・ツールの導入によりグループワークの発表等の円滑化によって教員のフィードバック時間を長く確保することができるなど、学生の深い学びを導く教育の実現につながることが確認された。また、ALサポート・ツールを配備した実験教室で講義を実施した担当教員全員から意見を収集したことにより、学生の学びを深める次世代のアクティブ・ラーニング型教室に関する知見を幅広く蓄えることができた。
(4) 高次のPBLのスタートアップ支援を実施する。  本年度、PBL実施に関する全学的調査を実施した。本調査により、PBLの協力先(企業・団体・地域等)を一覧で把握することができ、また、PBL実施上、課題となっている点を洗い出すことができた。これまで科目によって対応が異なっていたPBLの協力先との協定締結の手続および書面等を整理し、PBLのスタートアップを円滑に進めるための体制整備が進んだ。また、フィールド調査や販売実習等における注意点や許認可手続等も整理し、PBL実施上、担当教員が留意すべき事項が明確になった。
  PBLの協力先との協定締結の手続および書面、フィールド調査や販売実習等における留意点等が整理されたことにより、PBLの円滑なスタートアップが可能となり、学生の知識活用力向上の機会を安定的に提供する体制が整備された。
(5) 設定したチェック項目およびデータ収集方法に沿って事前・事後学習の内容のチェックを実施する。  前年度、シラバスを改訂し、事前・事後課題を含む授業外学習の詳細が明記されるようになった。また、前年度、授業外学習の成果を成績評価の対象とすることにしたが、本年度は、授業外学習の成績評価の割合を原則として20%以上にすることを決定し、授業外学習の実質化を推進した。さらに、授業外学習の内容を含むシラバスの記載内容や形式を教員がセルフチェックできる「チェックシート」を開発し、運用を開始した。授業外学習を含めてシラバスに記載された内容は、設定したチェック項目に沿って、教学委員会および学部長・学科主任が確認し、不備があれば修正を依頼する体制が整備された。
  チェックシートの開発・運用開始により、担当教員が授業外学習を含むシラバス記載内容の適正性を自ら確認できるようになり、学生がすべての科目の授業外学習の内容や授業計画を詳細に把握し、学習計画に活かすことができるようになった。また、授業外学習の成果が成績評価において一定割合以上考慮されることになり、学生の授業外学習に対する意識が向上し、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びが促進されるようになった。
(6) 検討した授業撮影方法に沿って授業撮影を実施し、従来の授業参観との違いを検証し、新たな授業改善点を発見する。  前年度の試行により蓄積した授業撮影ノウハウ(最適なカメラ位置や撮影範囲、撮影上の注意点など)に基づいて、本年度、15科目・16クラスの授業撮影を実施した。スタッツデータの測定と授業撮影を同時に実施することにより、多面的な視点から改善点を発見できるようになった。具体的には、スタッツデータ分析結果から特徴的な授業進行等を洗い出し、その様子を撮影した映像によって確認することができるようになった。また、授業撮影データが蓄積してきたことにより、今後、FD研修会等で、実際の授業風景を見ながら、科目による授業進行の違いなどを確認し、授業改善の方向性を検討することが可能となった。
  3方向から授業を撮影したことで、教員の教育方法のみならず、学生の受講態度やグループワークの進め方など、多角的視点から授業の改善点を発見することができるようになった。また、FD研修会等で実際の授業風景を確認しながら、より具体的に授業改善の方向性を検討することが可能となり、学生の学びを深めるための教育改善を加速する体制が整備された。
(7)学生のリーディング・ライティング量の全学的調査に向けた手法やルールを検討する。  学生の授業外の学習時間、リーディング量、ライティング量を調査する方法および調査票の開発を行った。また、全学的調査の実施に向けて試行調査を行い、調査手法および調査票の改善を行った。さらに、担当教員が当初、授業内外で予定していたリーディング量、ライティング量と、調査によって明らかになった実際の学生の学習量等をつき合わせることにより、学生の学習実態に即して授業改善が促進される仕組みづくりの検討を進めた。
  加えて、本年度は、調査結果の分析方法および分析結果の担当教員へのフィードバック方法についても検討を深めた。
  学生の授業外のリーディング量・ライティング量の調査結果を分析することにより、適切な量と質のリーディング・ライティングアサインメントを具体的に検討し、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びを促進する仕組みづくりが進んだ。
(8) 学習支援センターのサービス改善を図り、利用促進のための認知度向上施策を検討・実施する。  昨年度の検討結果を踏まえて、本年度は学生の授業外学習をサポートするための勉強等の実施を学習支援センターの中心的活動とすることにした。具体的活動として、第一に、学生ニーズの高い英会話等に関して課外講座を実施し、学生の主体的学びを促進した。第二に、学習支援機能充実のための施策として、学生が授業外で後輩や仲間の学生の学習を支援(ピア・サポート)する学生ボランティア「Shares(シェアーズ)」を組織した。Sharesは、学生の視点から、科目における学習のみでは十分に修得することができない計数処理やプレゼンテーションなどに関する講座を企画・開講し、多くの学生に課外での学習の機会を提供した。
  学習支援センターおよびShares主催の課外講座の開講により、学生は、学年によらず、自身の学習進度に応じて不足している知識・スキルを補う機会を得た。講座によっては150名を超える参加者があり、学生の主体的な学習を促進する具体的成果があった。また、Sharesの発足により、学内に学生相互の学び合いによる能動的な学びの文化が醸成されつつあることも大きな成果であった。
(9) 授業出欠等の学習行動データを測定する。測定データのアーカイブ方法を検討・設計し、ラーニングポートフォリオの試験的運用を開始する。  必修科目の出席状況など、学生の学習行動の把握に寄与するデータを特定し、その収集を行った。収集した学習行動データを用いて、アカデミックアドバイザーが学生と面談を行い、学習計画等の指導を行った。また、学生自身が学習計画等をラーニングポートフォリオに入力し、その進捗を自身で管理し、振り返りを行う体制の整備が進み、試験的運用を開始した。
  これまでGPAなどの過去の学修成果のみに基づく学習指導が行われてきたが、本補助事業の取り組みにより学習行動というプロセスデータも合わせて活用できることになり、より実態に沿った深い学習指導が可能となった。また、ラーニングポートフォリオを活用して、過去の履修状況や学修成果に照らして、学生自身が自己成長を促す学習計画を立案し、振り返りを行うことができ、主体的学習者としての習慣を身に付けることが促進された。
(10) ラーニングコモンズにおける学習環境の向上施策を検討し、設備備品等の充実を図る。  グループワーク等の学生の主体的学びを促進することを目的に、自由が丘キャンパス6号館4階のラーニングコモンズの整備が当初計画よりも早く完了した。また、設備備品等のハード面からの学習支援に加えて、学習支援センターによる勉強会等を実施したことにより、ハードおよびソフトの両面から学生の授業外学習を支援する体制が整備できた。
  ラーニングコモンズの早期整備によって学生の授業外学習環境が向上したことにより、特に本学のアクティブ・ラーニングで多用されているグループワークやプレゼンテーション等の授業外での取り組みが促進され、学生が学びをより一層深めることができるようになった。
(11) 自主財源で行っている1年生に加えて、2,3年生および卒業生を対象にPROGテストを実施する(パネル調査)。  これまで1年生のみであったPROGテストの対象を拡大し、2,3年生にも全員受検を義務づけることにした。これにより、経年での学修成果の把握(パネル調査)が可能となった。テスト実施時期を工夫し、ガイダンス期間中に一斉にテストを実施することにより、受検率の向上を図ることができた。パネル調査結果を全国平均との比較等により分析することによって、本学学生の技能・態度における強み・弱み、学修成果をデータに基づいて把握することが可能になった。また、スコア上位者に対してヒアリングを実施し、リテラシーおよびコンピテンシー向上のポイントを探り、教育改善に役立てることを試みた。さらに、卒業生およびその就職先に対してヒアリング調査を試行し、大学での学修成果が社会でどのように活かされているのか等について検討を行った。
  PROGテストを用いたパネル調査により、学生の強み・弱みに沿った授業改善が促進されるようになった。また、学修成果をデータに基づいて可視化できるようになったことで、教員の授業改善に取り組む意欲も高まり、一部の科目(経営学部2年次ゼミ等)では授業プログラムの大幅改編などにつながった。さらに、卒業生および就職先調査により、出口(卒業, 就職)を意識した質保証を伴った大学教育の実現に対する学内意識を高めることができた。
(12) 本補助事業に関する特設サイトを安定的に運営し、最新情報の公開に努める。  昨年度開設した特設サイト上で、本補助事業の進捗および事業成果を公開した。また、特設サイトの更新フローを確立し、安定的にサイト運用できる体制を整備した。
  特設サイトを通じた情報公開により、本補助事業の進捗および事業成果を広く一般に公開することができた。
(13) AP実行委員会および教育支援センター、その他関係機関において情報共有等の会合を適時開催し、専門家委員会からのアドバイスおよび第三者評価委員会からの助言・指導を受けつつ、本補助事業を着実に推進する。  AP実行委員会および教育支援センターは、原則月1回のペースで会合を開き、事業の進捗と課題を確認し、必要な対応を検討した。これにより、本補助事業の着実な推進が担保された。
  また、2016年2月12日に専門家委員会および第三者評価委員会を開催し、これまでの事業の進捗および成果を報告し、スタッツデータの分析方法や今後取り組むべき改革の方向性等について具体的にアドバイスをいただくことができた。
  専門家委員会および第三者評価委員会の委員からの指摘・アドバイスによって、「大学教育再生加速プログラム」として期待された成果を最大化し、学生の深い学びを伴った教育を実現するための本補助事業の方向性を定めることができた。

ページの先頭へ戻る