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コンテンツ業界の今を語る 放送作家 高橋洋二氏

放送作家 高橋洋二氏 × 情報マネジメント学部准教授 柴田匡啓

「放送作家」の仕事とは?

柴田:「コンテンツ業界の今を語る」リレーインタビュー、デジタルコンテンツラボでご協力いただいている客員研究員の方から始まり、コンテンツ業界で活躍されている様々な方にインタビューをお願いしています。今回は、「タモリ倶楽部」や「サンデージャポン」、また「爆笑問題」の番組に多く関わっていらっしゃる放送作家の高橋洋二さんに来ていただきました。よろしくお願いします。それから、先日、「放送作家にインタビューするぞ!」という話をしたら「興味があるのでぜひ同席させてください」というので、ゼミ生を同席させていただいております。岡野雄樹といいます。

岡野:よろしくお願いします。

柴田:まずは、不勉強で申し訳ないのですが、「放送作家」の仕事の内容をお聞きしたいのですが?

[写真]高橋洋二氏

高橋:そうですねえ。テレビ番組で言うと、「タモリ倶楽部」は現在3人、「サンデージャポン」だと6人と、番組によっていろいろですが、番組の最後に横スクロールで出てくるエンドクレジットのはじめの方に「構成」として出るのが放送作家です。「構成作家」「構成者」「放送作家」はほぼ同意語で、ドラマ以外のテレビ番組の台本や構成を担当するものですね。ドラマの台本を担当する人は「脚本家」と呼ばれています。まあ、多分きちんとした定義はないと思いますが、たとえば、「職業はなんですか?」と聞かれたら、「放送作家です」と答え、「この番組では何をやっているのですか?」と聞かれれば、「構成です」と答える感じかなあ? 仕事内容としては、基本的には番組のネタやアイデア出しは、放送作家だけでなく、かなり複数いるディレクターやプロデューサーなど全員で出し合い、会議でそれらを取捨選択し、最終的に台本化するのが放送作家になります。ですが、大御所の放送作家ですと、会議で意見を言うだけ、という方もいらっしゃいます。収録や編集はディレクターの仕事で、ナレーション台本は放送作家が書きます。

柴田:なるほどねえ。まさにテレビ番組のコンテンツクリエイターといったところでしょうかねえ。ところで、高橋さんは最初から放送作家を目指していたのでしょうか?

高橋:いえいえ、私の場合は、1982年に始まった「タモリ倶楽部」が好きで見ていたら、番組にちょくちょく「作家の景山民夫」とプリントされたTシャツを着たサングラスの男が登場しているのを見て、「放送作家って職業は楽しそうだなあ?」と思っていたくらいです。そんな時、当時所属していた法政大学映画研究会のメンバーで良く通う新宿のゴールデン街のスナックで、シティボーイズの知り合いの常連客と出会い、「若い放送作家(ブレーン)を探している」というので、「僕やります!」と答え、シティボーイズさんとお会いしたのです。当時すでにブレーンだった放送作家の宮沢章夫さんがいらっしゃって、宮沢さんの弟子のような形で、文化放送に「作家見習いの高橋くん」として出入りするようになり、1984年1月1日付で、「吉田照美のてるてるワイド」でプロデビューしました。その頃はプロデューサーやディレクターさんに毎日怒られてばかりいましたね。それからは、ラジオの仕事もずっとさせてもらっています。

「俺のやっている現場は、本当に古いメディアだなあ」

高橋:そうそう、これまでのインタビュー読みましたが、面白かったですねえ。読んでみて痛感したのは、「わあ、俺のやっている現場は、本当に古いメディアだなあ」と思いましたねえ。特に、デジタルコンテンツ関係の方のお話は、「今後のシステムはこうなりますよ」とか「今後のハードはこうで」って言うのがあって、そこに我々の知恵や若い人の知恵が入りますよ、と言う話ですけれどもね。放送業界っていうのは、旧態依然とした許認可制度に守られた事業が、私たちの生まれる前から脈々と続いているわけで、その中で「これが面白そうだなあ」ということは日々考えたとしても、「ハード」がどうのこうのなんて言うのは、われわれのイメージの中には無いのですよね。放送作家に関して言えば、「面白い企画」とか「面白いセリフ」「面白いコント」っていうのは日々考えているけれど、環境はがっちり決まっている中で、いろいろ模索しているのだなあと思うんです。

柴田:まあ、メディアやスタイルが変わっていったとしても、本当に面白いものは変わらないですけどね。ただ、厳選されたもの、良く考えられて練られたものを、ある一定の決まった時間に流す形でないものがこれからはどんどん出てくるということはありますよね。例えばU-Streamなんか見ていると、ものすごい量の生放送が流れていて、確かにすごいと思うけど、いわゆる「ダダ漏れ」は、最初のうちはわりと面白く見ることができるんだけど、だんだん見るのが億劫になってきました。また、放送ではないので、色々な規制もなくて、中にはとても見るに堪えないものや、TV放送では扱えないようなものもあって。放送禁止用語っていう概念もないしねえ。

高橋:ああ、放送でいう放送禁止用語は、実はいわば業界の自主規制で、局側が広告主に対して遠慮して、あまりやらないようにしようというだけの話なのですよ。

柴田:そうだったんですか?私はてっきりちゃんとしたルールがあるのだと思っていました。

ここにきて「広告主ありきだった」って気がついた

高橋:ただ、ここにきて特に民放の現場の末端では、「広告主ありきだった」っていうことを、みんな一斉に、「ああ、そういえばそうだったのだっけ?」って、気がついたって感じなんですよ。昔、ある番組の司会者がCMに入る前に「これからCMに入るのでトイレに行ってください」と言ってクビになったなんて話もあったのですけど、「こんなに厳しいの?」という反応も現場ではあったのですよ。

柴田:危機感ではないのですか?

[写真]高橋洋二氏

高橋:え?そんなにだめ?ていうような。そしたら「だめなんです」っていうのを、かなりのスポンサーや広告主の団体が局に抗議をして、それ以降放送台本の1ページ目に「私達の放送はCMによって成り立っています」、みたいなことがどーんと書いてあるようになったりして。なので放送作家の今後と放送の今後っていうと、「ああ、広告なんだなあ、我々は」という意識を今後どう持てばいいのかなあっていうことと、広告と関係ないところでも利益を生んでいこうという動きになってきていて、映画作ったりとか、DVDにして売ったりとか。っていうのもベースに面白いことを考えてそれを面白がってくれる人がいる図式が壊れない限りは、いいことなのかな?と思います。というか、そこには未来があるのかなと思いますね。

柴田:だからやはりそのテレビっていう2兆から3兆円ぐらいある市場の8割ぐらいを占めてる「広告費」っていうのは、テレビに投入されているものが徐々に別のメディアに移ってくっていう可能性があるし…。

高橋:それはもう1992年をピークに下がっているんですよね。

柴田:そうですよね。去年もまた11%ぐらい下がっているし。

高橋:そう、ガンガン下がって…。そりゃまあ当然の話だなって気がしますね。

柴田:でも高橋さんの場合は、その広告費が流れ流れていろんな制作費とかになったところで飯食ってるわけでしょ。それが下がるってなると、どんどんその分が比例分配なので下がってっちゃうっていうことはないんですか?

高橋:それはもう。例えば番組をやっていてどういう形に表れるかっていうと、2つのパターンがあって、6人いた放送作家が4人になるとかね。こういうパターンと、首は切られないんだけど、ギャラが3割減ったりとか、半分になったりとか。っていうことが。
それは2009年ぐらいから行われていますね。でまあ、それはある程度覚悟していたから、半ば面白がってるところもありますけどね。それと、冷静になって、今まで恵まれていたんだなあっていうようなことも感じますね。

柴田:だからあとはそれを、どこでどうやってお金を配分していくかっていう話がでてくるんだけど、テレビ業界っていうのは、テレビ局があって広告代理店があって、スポンサーがあってっていう構造の中に、広告費が流れていって、収益につながっているんだけど、もしかすると、広告費の減少によってこの構造は変わらざるを得なくなりますよね。場合によっては、電子書籍のように「中抜き」の時代もやってくるかもしれない。

高橋:それのすごく身近な例はテレビじゃなくてラジオなんですけれども、テレビ局も大変ですけど、ラジオ局はその10倍くらい大変なので、スポンサードされている番組、されてない番組の色分けはすでにあります。されてない番組は、スポンサードされてる番組から補助を得るという形で制作費を賄っていたんですよ。でもそれはまだ呑気だった時代。それが、そんなんじゃだめだっていって、利益を生まない番組はもう終わらせるみたいな動きが、始まったんです。もっとすごいのは、例えば準キー局とか、地方のラジオ局とか夜12時以降は停波してしまうとか。もう目に見えて厳しいことになっているんです。

柴田:この前聞いたんですけど、オールナイトニッポンとか、昔我々がよく聞いていた番組がありますけど、提供も昔は15個ぐらい並んでいたけど今は2つ3つになっているとか?

高橋:オールナイトニッポンもそうなったんだ。オールナイトニッポンの特徴は、少しの金額でもいいから沢山のスポンサーっていうことをやって、あとネット局が多いからネット料で利益を得ていたっていうのがあるんだけど。私が長年やっているTBSラジオの「JUNK」は、オールナイトニッポンよりネット局が少なかったりして、だからネット料っていうのは見込めないから、例えば1時台のここまではA社、あとはB社とC社が入るとか。

旧態依然とした放送の中ではラジオこそが最先端っていう気がしますね

柴田:そうですか。ラジオは前々から相当厳しい、でも厳しいからこそ、またテレビに比べれば低予算なので、いろいろなことができて、逆に面白いという面もあるのではないですか?

高橋:僕はラジオの現場が長いって言うことと、自分自身が「ラジオ聴き」でもあるから、旧態依然とした放送の中ではラジオこそが最先端っていう気がしますね。「旧態依然とした」っていうのは例えば、テレビの場合だと、大手プロダクションの意向には反抗できないとかね。吉本枠とかジャニーズ枠とかがあるとか。だけどラジオは、有名でなくても面白い人である限りは出ることができるみたいな。

柴田:ラジオの場合は、ある程度聴取率を、最初は気にしないで流しておいて人気がでるのを待つっていうことができるよね。テレビは今もう全然そうは行かないじゃない。

高橋:本当にこの人を出したいのかっていうと、そうじゃないんだろうなあっていうのが常識的な感じになっていますよね。相も変わらずの顔ぶれっていうのがテレビの中にまだあるけれども、ラジオの場合は例えば有名じゃないけど面白いライムスター宇多丸さんとかね。彼なんかは自分の番組を深夜に持っていて、内容が面白いってことで、別にラップファンでもないようなリスナーが、宇多丸さんの話し、面白いよってことになって局地的なラジオスターになって。そうするとTBSラジオ内で午後のワイドの水曜日のレギュラーになった。そういう感じで自社が育てたラジオスターがうまいこと各曜日各時間に散らばっていくみたいなことが、宇多丸さんに限らずいろんな人材がでてきますよね。

岡野:テレビの深夜枠から芽が出てゴールデンに出て行くみたいな。

高橋:ごめんなさい。それは今話した話とは似ているようで違うんです。

岡野:そうなんですか?

高橋:テレビの場合、まず、深夜からゴールデンにいくと規制がかかるんですよね。いろいろとね。言っちゃいけない表現があるとか、面白いけど下品な冗談はファミリー層向けではないって。
「アメトーク」ってあるじゃない。23時台の。ものすごい数字をとって、もちろん面白いからとっているんだけど、それが時々ゴールデンスペシャルなんていって19時~21時と3時間やるけれども、それも面白いんだけれども、必ず、ゴールデンの時には放送できなかった部分っていうものを深夜に放送したりするのは、僕が言ったことのいい例だと思う。実は枠移動っていうのは、一見出世のように見えるんですけども、現場はあんまり嬉しくないんですよね。さっき言った規制が大きいっていうことと、ゴールデンっていうのはあまり視聴率が取れないんですよ。僕の感覚でいうと、面白いことと数字が直結しない感じがあるの。だから深夜で視聴率12%ぐらい取れているのがゴールデンにいくと7%~8%っていうのが慣例なんですね。それはゴールデンの時間帯はNHKのニュースが強い。また、もともと面白い新しい番組を見つけて探すぞっていう意識が多分視聴者にない。深夜はわりとみんなザッピングしてみている感覚が高いと思うので、面白ければ数字ががっとくるっていう。だからより健康的な感じがするんだよね。23時以降の番組は。

柴田:より自由競争的な感じがするんだね。

高橋:仲が悪いプロデューサーがいるとして、片方がちょっと出世したりすると、そのプロデューサーが持っている深夜番組をわざと編成にかけてゴールデンにもってくるとか、そいうこともあると聞くよ。テレビ局の仲が悪い同士の報復合戦というのは昔からあって、それは気に入らないヤツが局の近所でやっているロケのときに、わざとカメラの前を通り過ぎるということとか。子どもっぽいやつがいて面白いなあなんて思ってるんですけど。

柴田:それに比べてさっきのラジオの話にもどると、ラジオの場合だと?

高橋:自分達が面白いと思ったことをそのまま放送に乗っけることができるケースが多くなってきたかなあと。

柴田:それは、規制がゆるいから?

高橋:だと思う。このプロダクションのタレントを使わなければならないというのがあまりないから。これはギャラが低いからっていうことなんじゃないかと思うけど。今ラジオに出て面白いことをしゃべっている人は、金儲け抜きでラジオが好きだからラジオにでているっていう人が多くなっているような気がする。それは我々が昔聞いていたオールナイトニッポンも、オールナイトニッポンでしかちゃんとしゃべらないとか、そういうラジオスターが主役の時代からそうだったんだ。だから当時はフォーク歌手だとか文化人。今もいろんな職業の人が来ていますよね。ラッパー、ミュージシャン、評論家…。

[写真]柴田匡啓

柴田:だから一億層クリエーターみたいな昨今の時代背景と、ラジオっていうのはものすごく親和性が高いような気がします。

高橋:ラジオっていうのは昔から笑えるネタをリスナーから集めてそれを紹介するっていう、「欽ちゃんのドンとやってみよう」の時代から現代まであるんです。僕は25年放送作家やっている中、常に入れ替わり立ち代りそういう番組をやっていて、ついこの間まではアンタッチャブルさんの番組をやっていたんですけど、投稿してくれるリスナーの中には昔から面白い人がいるなあと思っているんですけども、その質が異様に高くなっていますね。それは、どのくらい高いかっていうと、例えば、アンタッチャブルの番組で「来週はブラックマヨネーズが来るので、ブラックマヨネーズがやりそうなネタを募集します」というのを告知するんです。そうすると、非常にレベルが高いネタがどーんと送られてきて。その中でいいやつを選んで、ブラックマヨネーズさんに見せると、本当にご本人たちが予想していたよりもものすごくクオリティが高いということで、びっくりしているんですよね。そんなことを続けているうちに、「他力本願ライブ」っていう名前で、番組主催でライブをやりますということになったんです。出るのは東京03やおぎやはぎを始めとした実力派の芸人さんたちですね。そのライブでは、彼らは持ちネタはやらないんですよ。リスナーが送ってくれたネタの中で気に入ったのをやるっていうのを300人規模ぐらいでやったんですけど、めちゃくちゃ面白くて盛り上がった。芸人さん本人としてもとっても新鮮だと。特におぎやはぎさんなんて人前であまりネタをやらなくなってきているところに、しかも、自分か書いたんじゃなくて、自分のファンが「こういうおぎやはぎが見たい」っていうのを人前でやっている新鮮さっていうのと相まってすごく充実したライブになったんです。
お金儲けっていうことだとちょっとだけ黒字くらいなんですけど、でもその方法論でこれからのモデルになるんじゃないかと思いましてね。一般の人たちの優れた才能を無駄なく作品に載せるっていうのはね。

柴田:そのライブはラジオでやったんですか?それともライブで?

高橋:有料の会場でライブをやりました。一部の模様は、こんなに楽しかったんですよって雰囲気を伝えるために音源を放送しましたが。

柴田:やはりライブですか。音楽業界と同じような傾向が出てくるのかもしれませんね。

タモリさんがその台詞を使ってくれた。放送作家冥利に尽きますね

柴田:ところで、話題は変わりますが、高橋さんが放送作家をやってきて、「これが放送作家の醍醐味」みたいなエピソードをいくつか紹介していただけませんか?

高橋:放送作家の仕事の中に、キャスティングっていう仕事があるんですけど、だれだれという人が今面白いですよ、ってことを他のスタッフより知っていなきゃいけないんですけど、そこで若干自慢話をするんですけど、タモリ倶楽部ではるか昔に、女性のお尻をまるで絵画のように鑑賞するっていう「今週の5つ星り」っていうコーナー がスタートしたんですよ。で、タモリさんともう1人、毎週コメンテイターが必要だという話になって、そのとき僕と一緒に構成に入っていた女性の放送作家との共通の知り合いで、講談社の編集者で武田さんという人がいて、「武田さん面白いよね」「最近ペンネームを使って時々ラジオでしゃべったりしている感じも面白いよね」ってキャスティングしたのが今の山田五郎さんなんですよ。だから「山田五郎」っていう名前が初めて出たのが20年前のタモリ倶楽部のそのコーナー。
あとは、やはりタモリ倶楽部で10数年前、映画企画の話があった時に、新鮮な人材が欲しいということになりました。私が大阪に行ったときにラジオを聴いていたら、ある監督がすごく面白かったので、ぜひにとお願いしたんです。、それが井筒監督だったんです。

柴田:そうなんですか。そんな話はなかなか表に出てきませんよね?昔一世を風靡した「ボキャブラ天国」での芸人のキャッチコピーもいくつか作ったとか?

高橋:キャッチコピーね。爆笑問題を「不発の核弾頭」とか。

柴田:あれは結構考えるの?

高橋:ああいうの考えるの結構好きで、自分でも凄い得意だと思います(笑)。自分でもうまいなと思ったのは、アリtoキリギリスが新人の頃出てきて、思い悩んでぱっと出たのが「昆虫大戦争」。スティーブ&ジャニカっていう、男性と女性のボキャブラ天国に出させるためだけのユニットっていうのがあって、全然芸人でもないんだけど、そのキャッチコピーが「全米チャンピオン」。

柴田:ごめん、ぜんぜんわからない。

高橋:だからボキャブラの全米チャンピオンですよってことなんですけれどもね(笑)。放送作家として幸せ者なんだなあと思うのは、自分が、「あ、面白い」と思ってクスッと笑うような思いつきをそのままダイレクトに仕事にぶつけられるっていうことかなあ。毎週やっている仕事の嬉しいものの1つに、サンデージャポンで太田光さんがVTRあけのスタジオで、どうボケたらいいかっていうのをVTR事前に見て「ボケ案」っていうのを考えるんですよ。それのね、放送をみて「今回はいくつ採用」みたいなのが凄く嬉しかったりして。例えば今年の6月の放送で、珍しく政治の話題を徹底的にやろうっていうのと、人気のAKB48を呼ぼうっていうので、4人呼んだんですね。前面に舛添さんとか生方さんがいて、2番目にAKB48が4人いて、その上にレギュラーがいるみたいなことで、「今日はこのメンバーでやります!」っていう短いVTRが番組の冒頭にあって、で、そのあとすぐスタジオに戻る。ここで太田さんは何を言ったら面白いかなあと思っていくつか書いたんですよね。それで採用になったのが「さ、今日はこのメンバーでW杯カメルーン戦の徹底予想をします」っていう(笑)。放送でもウケて。で、あとで太田さんと話して、あのパターンは面白いですねって。やりもしないことをやると宣言するの。

岡野:高橋さんの本を読んで、ギャグって言うのは全部本人が考えているんじゃないんだって初めて知ったんですけど…。

高橋:これは特殊な例ですよ。太田さんは、いくつものヒントが欲しい。というのは自分の中にないものも欲しいからボケ方のパターンを沢山見せてくださいっていうことなんです。僕が書いたボケ案を、彼なりにアレンジして言うときもあるし、僕が全く書かなかった、彼のアドリブもあるし。

岡野:今の「カメルーン戦の」っていうのは、すごい太田光っぽいじゃないですか。もうどんぴしゃり。そういうのか考えていくつかパターンを書く。

[写真]高橋洋二氏

高橋:そうです。タモリ倶楽部の台本を書くときも、これは想定台本なわけでこの通り行かなきゃ行けないときもありますけども、基本何々があってトーク、みたいなことになるわけですが。でもタモリさんがいいそうなことを長年書いているので。ある回で若手芸人がバンジージャンプをするっていう回があって、そのときにタモリさんがいいそうなことで書いたのが、「我々が駆け出しのころにバンジージャンプがなくってホントによかったですねえ」って書いたら、ほんとにそう思ったらしく実感込めて言ってくれて。後日、「笑っていいとも」と見ていて、やはりバンジージャンプの話題になったときもその台詞を使ってくれたから、すごく嬉しかったね。それはホント放送作家冥利に尽きますね。その人が言いそうなことを見事に書けた時っていうのは。
だからほんとにお金じゃないなって思うんですよね。さっき言ったようにギャラはどんどん減っているんですが、これだけ楽しいことやっているんだから、お金がもらえるだけいいやっていう感覚にもなりますよね。

どんな時でも本当に面白いものを視聴者に届けていく、という気持ち

柴田:例えば今後、テレビ業界のビジネスモデルが崩れていってしまったときに、ネットとか、U-Streamとかが未来永劫続くとは全然思ってないんだけど、その中間ぐらいで、ある程度の番組作りをローコストでやるんだけど、構成して、ちゃんと見せられるものっていうのを、スポンサードしながら何らかの形で放送、または通信できるようになってくると思うんです。そうすると、放送作家のように、著作権を持つ人に対しては、ダイレクトに報酬が分配されるかもしれない。まあこんな話をテレビ局側の人に聞くと、凄く嫌がるんですけど。

高橋:それはやっぱり広告主の顔色が気になるんでしょうね。広告主の中にどれだけそういう新しいメディアのことがわかっている人がいるかっていう話ですよね。

柴田:だからまだまだ時間は掛かると思うんだけど。例えば広告の到達率とか、最終的に広告効果がどれだけあったかっていうのはテレビだとなかなかわからないでしょう?それに対してGoogleTVみたいなものから放送すれば、全部わかるじゃないですか。それこそ試聴率っていうのが正確にわかるでしょ。今みたいな都心なのに600世帯しか視聴率調査やってないとか、録画は入っていないとか、ネットも全然入ってないとかじゃなくて確実にわかるから。そうなってくると、その確実な視聴率を発表してそれをオークションにかけるかもしれない。だから見られてるの番組の広告料は高くなるし、見られてないのは安くなるわけ。まあ全部想像だけど、番組と広告料のあるべき姿が実現するかもしれないですよね。いよいよ来年は、アナログ停波でデジタルに全部移行するっていうんだけど、それと別に時をあわせてるんじゃないんだろうけども、世の中が今年、来年くらいで特に放送動画系はガラっと変わっていくような気がしますね。

高橋:放送作家としては、載せられるお皿だけが変わったっていうだけで、どんな時でも本当に面白いものを視聴者に届けていく、という気持ちで頑張っていきたいですね。

柴田:「常に原点を見つつ」ということでしょうか?なんか、話が拡散しちゃいましたが、お時間の関係もあるので、今日はこの辺で締めさせていただきます。長い時間ありがとうございました。

岡野:ありがとうございました。

高橋:こちらこそ、どうもありがとうございました。

2010年7月

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