人材マネジメント論

履修年次:1・2単位:2

担当教員

横溝 岳

産業能率大学
横溝 岳

授業の目的と概要

 人材マネジメントとは,様々な仕事と人材を有機的に結びつけて組織目的を達成するための中長期的な方針と枠組みです。今日の企業経営において,人材は最も枢要な経営資源です。しかし,組織の人材戦略に従って必要な人材を調達(採用)し,能力を開発(育成)し,活用(適材を適所に配置)し,公正に評価して処遇することは容易なことではありません。なぜなら人材とは個人としての特性,人格,価値観など様々な要素が絡み合った複雑で特異な経営資源だからです。
 この授業では,人材戦略に従って様々な施策(個別機能)を実践するための人材マネジメントの理論や概念モデルを学習します。その上で,学生の所属組織での人材に関わる身近な問題や課題について,個別課題やグループ討議を通して,具体的に深く考えることに重点を置きます。
 初回の授業では主に人材戦略及び人材マネジメントの歴史的な変遷や概念的な考え方などを学習しますが,2回目以降ではそれらの知識を踏まえた具体的な施策(採用,昇進,異動,人事評価,人材育成,キャリアなど)を考察します。
 毎週,前回の授業の最後に提示される個別課題(講義内容に関する所属組織の問題や課題の整理など)に学生全員が取り組み,レジュメに要約して持ち寄り,授業の前半でグループごとに発表し,重要なポイントについて全体で討議します。後半では以下の授業項目にしたがって新たなテーマについて講述します。
 なお,授業で使用する自作(オリジナル)のテキストは,あらかじめ大学院の共有フォルダにアップロードしますので,各自が事前にダウンロードして持参してください。

ディプロマ・ポリシー (修了時の到達目標)

■:この科目で特に重視する観点

■①マネジメントに関する専門知識や理論,問題分析の手法を修得し,経営機能における的確な意思決定ができる

□②関係する人との連携・協力関係を築き,リーダーシップや高いコミュニケーション能力を発揮することができる

■③マネジメントのプロフェッショナルとして高度な専門性と責任感,倫理観をもち,自ら問題を発見して課題を設定し,現実的で実効性のある解決策を導き出すことを通じて,組織や社会の発展に貢献することができる

上記ディプロマ・ポリシーに基づく当科目の到達目標

  • 人材戦略や人材マネジメントに関する理論や概念を理解して,現場での身近な人材マネジメントに応用できる。
  • 自社の人材戦略と人材マネジメント上の問題や課題を的確に把握し,効果的な課題解決策を導きだすことができる。
授業項目 概要
人材マネジメントの考え方 冒頭でこの授業の概要や進め方についてガイダンスを行います。続けて,日米の人材マネジメントの歴史的な変遷を概観した上で,人材マネジメントの理論や概念モデルを理解します。そして,経営戦略と人材戦略の整合性,人材戦略を効果的に実現するための様々な施策(個別機能)の連動性について考えを深めて,日本企業の人材戦略及び人事マネジメントの問題と課題について考察します。
労働市場と求められる人材の変化 経済のグローバル化や技術革新が加速化するにしたがって,米国や日本の労働市場は大きく変化してきました。それに合わせて,企業と社員の雇用関係も大きく変質しています。では,こうした変化によって雇用する側(企業・組織)と雇用される側(社員・個人)は,何を,どのようにすることが求められるのでしょうか。こうした変化のメカニズムと今後のあるべき姿を考察します。
雇用と人材のポートフォリオ 近年,派遣社員やフリーターなどの非正規社員の雇用問題が注目されています。こうした労働市場や雇用関係の変化に伴い,雇用形態はどのように多様化してきたのでしょうか。そして,雇用の柔軟性の確保や人件費の抑制を行いながら,組織的なパフォーマンスを向上させるためには,どのような人材をどのように組み合わせていくべきなのかを幅広く考察します。
採用と退職 採用と退職は,企業内の人材の潜在的な質を決めて,経営環境に応じた人材の量を調整する極めて重要な機能です。この授業では,正社員を中心とした採用と退職に関する日米での相違点や実務的な施策について理解します。具体的には,最近の様々な統計資料や調査結果を踏まえて,企業の採用,定着対策,退職,雇用調整等の実態と今後のあり方について多角的に考察します。
昇進と異動 人材の昇進(昇格,タテの動き)と異動(ローテーション,ヨコの動き)について,選抜と育成の観点から基礎的な理論と概念モデルを学習します。具体的には,組織の中での昇進の構造とメカニズムを実証研究の事例を通じて理解した上で,異動(ローテーション)との関係性まで考えを深めて,日本企業における今日的な問題や課題について考察します。
目標管理と人事評価 成果主義的な考え方の浸透で,多くの企業は目標管理の導入や人事評価の改正を行ってきました。しかし,短期成果の偏重やチームワークの崩壊など新たな問題が発生しています。そこで,目標管理や人事評価の機能を再確認し,組織マネジメントや人材育成の観点から制度のあり方について考えを深めます。そして,企業の今日的な課題について,制度面だけでなく,運用面からも考察します。
成果主義と報酬制度 厳しい経営環境下で,多くの企業は社員の意欲を引き上げる報酬制度を目指しています。その代表格が成果主義賃金です。しかし,その功罪の指摘も数多くあります。そこで,報酬制度が持つインセンティブ(誘因)を理解した上で,成果主義賃金のメリットとデメリットについて考えを深めます。そして,今日の日本企業における非金銭的な部分も含めた報酬制度全般の今後のあり方について考察します。
人材育成と学習メカニズム 企業の発展にとって人材育成は非常に重要な課題です。しかしながら,そもそも人間の学習とは何か,どのような学習メカニズムが効果的に機能するのかなど,学習に関する本質的な理解は一般に知られていません。この授業では認知心理学や学習理論などを中心に効果的な学習のメカニズムを理解し,今日の日本企業における人材育成の仕組みや課題について考察します。
自律的なキャリア・マネジメント 今日,組織に大きく依存するキャリアではなく,自律的なキャリア・マネジメントが注目されています。では,そもそもキャリアをデザインしてマネジメントするとはどのようなものなのか。そして,どうすれば自分自身を成長させて充実したキャリアを形成することができるのか。こうした疑問に答えるために,自身のキャリアを振り返りながら,自律的なキャリア・マネジメントとは何かということを本質的に考察します。